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78:初恋の予感?

「粗茶ですが」

 古くはあるが広い円城寺家の居間。

 卓袱台を挟んで周と円城寺、そして顔見知りの刑事2人。

 ちなみに智哉は小さい子達の面倒を見る為、2階に上っている。

「ご質問をどうぞ」

 円城寺が言うと、刑事達の方がやや困惑顔をする。


「……この男性を知っているかな?」

 和泉がポケットからスマホを取り出す。

 円城寺は身を乗り出して画面を覗き込み、答える。

「……さて? なかなか特徴のある顔ですが、あいにく僕は存じ上げません」


 周君は? とスマホを渡され、画面を見ると。

 思い出した。

 何日か前、やはりこの家に来た帰りのことだ。

「見覚えあるよ。この近くのコンビニで見たことある」


「この男性が何か?」

「何日か前に、この男がこの近辺で誘拐未遂事件を起こしてね。被害に遭いそうになったのが君の妹さんだと聞いているんだけど……」

「ええ、そうです。あの時は偶然にも、一緒にしてくれた彼が手伝ってくれて事なきを得ました」

 円城寺の視線を受けて、周も無言で頷く。


「悪いんだけど、被害に遭った妹さんから直接、話を聞けないかな?」

 円城寺は少し迷う様子を見せたが、すくっと立ち上がる。そうして2階へと向かった。


 しばらくして、兄によく似た顔立ちの美少女が降りてくる。


「この人なんだけど……覚えてるかな?」

 円城寺の妹、鈴音はしっかりと写真を確認した後、

「私を連れ去ろうとした変質者」と、ハッキリした受け答えをした。


「……見たことある人?」

「全然知りません。ただ時々……担任の先生から、この頃、変質者が出るみたいだから気をつけるようにとは言われていました」

 小学4年生にしてはしっかりした話し方をする子だな、と周は驚いた。基本的に女の子は成長が早い。


「何か言っていた?」

「別に何も。学校から帰っている途中、後ろからゆっくり車が近づいてきて、止まったかと思ったらこの人が降りてきて、急に手をつかまれたんです」


「それで……」

「その時、通りかかった私の兄と……周君が助けてくれて……」

 ちらりとこちらを見る彼女の頬がなぜか、少し紅く染まっていた。


「無事で良かったね」

 和泉の父が安心した様子で微笑みかけると、少女も頷く。

 周はいつも思う。この人は本当に思いやりのある優しい人だ。


「恐れ入りますが、刑事さん」

 円城寺が急に固い声で口を挟む。

「この男性は確か、先日毒物によって殺害されたとニュースになっていた人ですよね?」

「そうだよ」

「妹のことで僕や母……が復讐の為に、この男性を殺害したとでもお考えですか?」

 周は驚いて友人の横顔を見た。

「妹は無事でした。それは間違いありません。であれば、我々にはこの男性を殺害する動機は何もないはずですが?」

「ないね」

 和泉はにっこり笑う。「ごめんね、疑ったりして。けど、一つ一つ、考えられる可能性を消去して行くのが我々のやり方なんだよ。気を悪くしないでね?」


 気を悪くするなと言われても、無理だと思う。

 周はすっかり怒っていた。

 よりによって円城寺を疑いの対象にするなんて。

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