137:犯人はこの中にいる!!
そこで賢司は緒方翔に連絡した。
『宮島に行って、ミサキと言う名の女性を頼ればいい。そうすれば助かる』
頭の悪いサルのことだ、綺麗で優しい彼女を見ればすぐに、劣情を催すに違いない。
そうしてあの男にはこう連絡しておいた。
『君は美咲のことが好きなのだろう? でも彼女には忘れられない男がいる。そのことは君も良く知っていると思う。だったらどうすればいいか、考えてみた。月並みだが、女性はやはり強い男に魅かれるものだと思う。それも危機を救ってくれた相手になら、なおのことだ。実はどういう理由か、彼女を狙う不埒者が今そちらへ向かっている。詳しいことは話せない。でも、もし不審な人物があらわれたら彼女のことを守ってあげて欲しい。その名前は……』
後は事態がどう動くか、様子を見てから次の一手を考えよう。
きっと間違いなく警察が動く。
上手くすれば、あの男を舞台上に引きずりだすことができるかもしれない。
そうすればもっと面白いことになる。
※※※
今にして思えば、下手をすれば本当に死者が出たかもしれない。
全員が無事で事件が解決したのは僥倖だったと思う。
ただ、未だにわからないのは。
タカヒロの父親も誰かから【ミサキ】のことを聞いてきたと言っていたらしい。
しかし彼も【Rain】を名乗る人物から聞いたと。気持ちが悪くなって賢司はすぐ、そのアカウントを使用するのを中止した。
そうしたら今度は、周のクラスメートが殺害された事件で【Rain】が誰かに指示を出した?
いったい誰が……。
思い当たる人物がただ一人、いる。
二度と連絡を取るつもりはなかったが、そうもいかなくなった。
電話はすぐにつながった。
『やぁ、賢司じゃないか。久しぶり。どうしたんだい? 君の方から連絡をくれるなんて』
『……【Rain】を名乗って、好き勝手をしているのは……お前だろう?』
『なんだい、唐突に』
『とぼけるな!! 何のつもりだ?!』
それはきっと、思いがけずタカヒロを救出してしまったあの出来事がきっかけだったと思う。
彼が連れて行かれそうになったあのいかがわしい店、調べてみた訳ではないが、おそらくあの男が絡んでいるに違いない。
商売のジャマをした人間がいる。
一緒にいたあのチンピラからそう報告が上がったに違いない。
忌まわしい【あの男】の元へ。
一度【敵】とみなした相手についてはどこまでも調べあげ、執拗なまでの嫌がらせをする。
そういう人間だ。
『なんだか良くわからないけど、君はいつも俺に対して何か怒っているようだね……賢司。何か誤解がありそうだ。どうだろう、少し時間を取れれば一緒に食事でも。少し話をしないか』
『貴様と話すようなことは何もない。それとも、あの件について真実を話すつもりなら……会ってもいい』
『あの件? さて、何だったかな』
真実を話すつもりはなさそうだ。
『だったら、訊くことは今回のことだけだ……あの、樫原詩織っていうアイドルはお前の息がかかったプロダクションの人間だろう?! 彼女のスキャンダルをネタに脅してきたあの男の子を殺すよう、手配したっていう【Rain】 は……お前だな?! 支倉!!』
『ああ……なんだか、うっとおしいゴミにまとわりつかれて迷惑しているから、何とかして欲しいってあの子に言われてね。いろいろ調べてみたけど、確かに生きる価値もないクズだってわかったから、消しておいたよ』
『どうやって……?』
『そんなこと訊いてどうするんだい?』
『……それは……』
『今の時代、ネットを駆使すれば大抵のことは用が済むんだよ。例え地球の裏側にいる暗殺者だって雇うことは可能だ。今回はたまたま、いいのが釣れてくれたっていうところかな。予めご褒美を与えておいたら、本当に実行してくれた』
『貴様、それでも人間か?!』
『ははは……賢司。君は意外と、正義感溢れるヒーローだったんだね。覚えておいた方がいいよ。この世にはね、2種類の人間しかいないってこと。強い奴か、弱い奴か……どちらが生き残るか、君ならわかるよね?』
『……警察に……』
『話すのかい? 俺は別にかまわないよ。ただ、そうなると君のつまらない悪戯もバレる可能性が高いけどね』
何をどこまで知っている?
支倉はこちらのことをどの程度把握しているのか。
確かめたかったが、恐ろしかった。
え~……ここらあたりはシリーズその7
【ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常:7~白い巨塔に潜む影~死を呼ぶUSBメモリと疑惑の制服警官~特殊捜査班HRT緊急出動せよ!!】を読んでくださいとしか……(T_T)
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