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121/138

121:ミーティングその3

 その場に沈黙がおりた。


挿絵(By みてみん)


 しばらくして、

「もしかして……」

「なに? 葵ちゃん」

「例の店のバーテンダーが聞いた【港】と【タラ】って言うのは……境港で猪又が起こした【ダラ】な事件……という意味だったのではないでしょうか?」

 伺うように彼は言う。


「僕もそう思うよ」

 和泉はにっこり微笑む。


「なんだ、ダラって?」

「山陰の方言で『バカげた』とか『くだらない』という意味だそうです。推測に過ぎませんが中原は、猪又が起こした事件を『ダラ』つまりバカバカしい茶番だと考えていた可能性があります」

「そんな……」

「とんでもない話だな」

「僕はそんなに意外でもないと思いますよ? 本人に会ってみれば、わかります」



「猪又の方はわかった。そうすると、角田の方はどうなるんだ?」

 友永が疑問を呈すると、

「あいつは猪又の自宅でその写真を見つけ……智哉君と樫原詩織に関する、過去の黒い事実を知った」

「だから消された……?」

「結論から言えば、そうなります」

 和泉は重大発言をしながら大欠伸をしている。


「そう言えば、角田が猪又の家から出てくるところを見た、っていう目撃情報がありましたよね。何をしに行ったんですか? そもそもどうやって猪又の存在を知ったんですか?」

 うさこが矢継ぎ早に質問を重ねてくる。

「あのね、うさこちゃん。人に訊いてばっかりいないで自分でも考えてごらん」

 むぅ、と彼女は唇を尖らせる。

 しかしそれももっともだと思ったのか、自分のノートをめくってみたりしている。


「うーん……」

「聡さん、甘やかしちゃダメですよ?」

 彼女のノートの一部に指をさそうとしていた聡介に、和泉は釘を刺した。


 しばらくして、

「あっ!! 猪又の保護司をしていたのが角田の叔父さんで……そっか、そこで個人情報を盗んだんだ!!」

 と、顔を輝かせた彼女だったが、

「で……何をしに会いに行ったの?」と、自問している。

「そこはまた後でね。話を進めるよ」


 なぁ、と日下部が誰にともなく問いかける。

「そもそも角田は、どうやって樫原詩織に近づいたんだ?」

「だからその写真に映っているモデルが彼女だって知って、脅してきたんだろ?」

 友永が答える。

「そうじゃなくて。いくらご当地アイドルだからって、そう簡単にコンタクトを取れるもんすかねぇ?」


「もしかして……誰かが手引きしたんじゃないだろうか」と、父。

「どうやって?」

「……方法は分からないけど、たぶん……例のグループメールに出てきた【Rain】を名乗っていた人物の仕業だと思うんだ」

「で、でもあれは、回線を契約しているのは藤江賢司氏の……」


 しばらく俯いて考えごとをしていた駿河が驚き、顔を上げる。

「乗っ取りだよ」

「乗っ取り?」

「昔、あったよね? どこどこに爆弾を仕掛けた、っていう予告を市役所や学校に送りつけた犯人として、送信元の回線とパソコンの持ち主が逮捕されたけれど、実は遠隔操作による第三者の犯行だったって言う事件」

「あったな、そう言えばそんなことが」


「2課の連中に頼んで、藤江家のパソコンと回線を調べさせてもらうしかないか」

「……およそ、あの兄貴が了承するとも思えませんけどね。プライバシーの侵害だなんだって」友永が呟く。

「でも、仮にも犯罪に利用されたかもしれないのに……」

 うさこが言い、和泉が引継ぐ。

「あの男の性格上、既に回線は解約して、パソコンも処分してるんじゃないでしょうか」


「おい……下手すりゃ証拠隠滅だぞ?」

「個人的なことを申し上げて恐縮ですが……僕はその方がいいと思います」

「なんでだよ?」

「藤江賢司氏はどうだっていいです。ただ、万が一にもまた周君や美咲さんに、何かしら疑いがかかるような真似があっても……」

「捜査に私情を持ちこむな……と、言いたいところだが。今回ばっかりは俺も人のことは言えねぇ。仮にも智哉が関わっているとなると」


 困ったものだな、という顔で聡介が全員の顔を見渡したその時、部屋の外からザワザワと賑やかな音が聞こえてきた。


「なんだ?」

「私、様子を見てきます」

 うさこが身軽に立ち上がり、外に出る。しばらくして彼女は血相を変えて戻ってきた。


「大変です、討ち入りがやってきました!!」

 討ち入りって、忠臣蔵じゃあるまいし……。

「なに?」


「捜査の責任者を出せって、クレーマーです!! それも2人も!!」

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