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104/138

104:ハッピーエンド(?)

 2枚目。


 Rain:『AAさん。実は君の大切な詩織が、少し困ったことになっている』

 AA:『何があった?』 

 Rain:『熱狂的なファンを通り越して、もはやストーカーとも呼べる男が彼女を狙っているんだよ。ほら、最近あったじゃないか。アイドルの帰宅時間を調べ上げた上で自宅に押しかけて乱暴を働いたファンが。詩織が今まさに、その危機に遭うかもしれないんだよ』

 AA:『許せない!!』

 Rain:『そうだろう? 殺してやりたいと思うぐらいだろう?』

 AA:『そんな奴に生きる価値なし』

 Rain:『君の言う通りだ。だから、頼みたいことがある』



 Rain:『……と言う訳で、やってくれるかな? かかる費用は全部こちらが負担するよ。君の大切な詩織がとんでもない悪党の餌食になる前に。ここで君が男を見せたら彼女はAA、君の虜だ。シチュエーションは……そうだな、ライブが終わった直後ぐらいがいいんじゃないか。衆人環境の中で行われる派手な事件であればあるほど、マスコミは騒ぎたてる。その事件はセンセーショナルで、彼女をより一層輝かせることができる。わかるかい? 世間に君の大好きな樫原詩織を認知させるためだよ。そうして彼女の名前と顔が全国に知れ渡るようになり、君は詩織を魔王の手から救った勇者として讃えられる。そうなればもう、君の将来は輝くこと間違いなしだ。君の大好きなゲームや漫画でもラストはそうなっているだろう? 魔王から救い出されたお姫様と勇者は必ず結ばれる』


 AA:『ほんとかな……』

 Rain:『僕を信じて』


 SIO::『お願い、勇者様!!』

 急に、詩織の顔を映した画像が現れる。

 両手を組んで胸の前に、まさに『お願い』しているポーズである。

 もしかすると『SIO』 とは詩織のことだろうか。


 AA:『なんてやつ?』

 Rain:『こいつだよ』


 再び、画像。

 いつどうやって撮ったのか、角田が詩織の肩を抱いて自撮りしている写真である。

 SIO::『マジきもかった!! 私が必死で笑顔を作ってるの、わかるでしょ?』

 Rain:『こんな奴をのさばらせておいて、本当にいいのか?』


 周は使用したことはないが、テレビで時々見かける『シィッター』というコミュニケーションアプリだろうか。

 可愛らしいイラストと共に遣り取りされているが、それは紛れもなく殺害依頼だ。



 ※※※


「この、タダでやってくれる……云々と書いているHN【Rain】って言う人物だけどな。お前のことだろう?」

 刑事は印刷物の文字を人差し指でトントンとつつく。


「知りません」

 周は即座に否定した。「だいたい、俺もスマホ持ってるけど、こんな画面は見たこともないし、そんなハンドルネームなんて知りません」

 相手は急に表情を変えた。

「知りません、わかりませんって答えておけば大丈夫だと思ってるのか?!」

 バン、と机を強くたたきつける音。周は思わずビクっと身体を震わせた。

「その次は弁護士を呼べ、か?! 舐めやがって!!」


 胸の奥が冷たくなり、苦しくなった。

 いつまでも帰って来ない自分のことを、義姉はきっと心配しているに違いない。


「きちんと調べはついてるんだよ!! このアカウントの元を、回線をたどって到着したのは……お前だ、藤江周!! お前ん家の住所で契約、使用されていたんだ!!」


 知らなかった。

 自宅がネットを利用できる環境であることはさすがに知っていたが、この手のSNSサイトはまったく利用したことがない。



「角田は、何か格闘技をやっていたそうで……腕力は強かったらしいな?」

 向かい合っている刑事は、こちらの顔を覗き込んでくる。

「力じゃ到底かなわないからって、こんな卑怯な真似して……どうせ、このAAとやらが依頼通りに角田を殺してくれたら、あとはバイバイのつもりだったんだろう?! 樫原詩織を名乗ったこの手の画像やなんかだって、お前のねつ造に決まってる!!」


 そんなこと知らない。


 だが、言っても無駄だ。

 目の前にいる刑事は頭から、自分が犯人だと思って疑っていない。


 取調室と言うのを周は初めて見た。テレビドラマなどでは何度か見かけたものの、まさか自分がそこに入れられるなんて、予想だにしなかった。


 狭く圧迫される空間。

 少しでも黙ればたちまち飛んでくる怒号。机を激しく叩く音。

 聞くに堪えない罵りの言葉。

 ひたすら抑え込み、圧力をかければ口を割ると信じているのだろうか。

 だが、身に覚えのないことを肯定はできない。


 ただ……こうして冤罪はでき上がっていくのだろうな、と周はうっすらと感じた。


 この苦痛から逃れるためなら。目の前の解放をただ願うなら、ただ一言。

『そうです、私がやりました』

 そう答えればいいだけなのだ……と。


 負けられない。


 自分が無実だということは、自分が一番良く知っている。


 それにしても。こんな形相をどこかで見た……。

 どこでだっただろう?

挿絵(By みてみん)


実は作者、IT関係に関してはさっぱりちんぷんかんぷんエビよ……。


が。ネット上のやりとりも、しっかりと元をたどれば、誰の仕業か特定できることだけは知ってるエビ。

もっとも個人情報の保護とかいろいろあるので、そう簡単にはできないってことも。


捜査上必要な通話記録やなんかは、裁判所の令状が必要なんだってね。

でも、この所轄の刑事はそういう煩雑な手続きをいろいろ省略して、裏技を使って周のことを特定したという設定で書いてます。


……本文中に書くべきだろう、それ……。

いや、いつかきっと……どこかで出てくる?


えーと……Lineじゃないですよ?rineっていう、架空のアプリですよー?

苦しい……( ; ゜Д゜)

それも苦しいので『シィッター』に変更しました……(笑)

ちはやさん、ありがとう……。

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