103:復旧したスマホから
「友永、すぐ署に戻るぞ!!」
聡介は叫んだ。
「え? なんで……っ」
宇品東署刑事課の玉島と言う刑事に関してはあまり良い噂を聞かない。ちょっとした証拠らしいもの、目撃証言などが出れば即、有無を言わせず連行。過去に何度か自白を強要し、冤罪事件を起こしたらしい。
しかも本来であれば未成年を事情聴取の為、署に連行するには保護者の許可がいる。
だがきっとあの刑事は省略している。
すぐにでも和泉に連絡しようと思ったが、彼は今、鳥取の空の下だ。
「周に何かあったんですか?!」
円城寺が叫ぶ。
聞いていたのか。しかし今は、それどころではない。
「教えてください!!」
「君は、周君の友達か?」
「親友です!!」
悩んだのは、ほんの一瞬だった。
「なら、一緒に来てくれ」
「僕も行きます!!」と、智哉が叫ぶ。
「しかし……」
「周の親友だって言うんなら、僕もそうです!!」
※※※※※※※※※
テレビで見たことがある、ここは取調室だろうか?
詩織とは別の部屋に通され、周は先ほどコンビニで出会った刑事と向き合うことになる。
「先日殺害された角田道久君のことなんだけど、君、よくケンカしてたらしいね?」
丸々とした顔の奥に埋まっている小さな目がギラリと光る。
そのいやらしい眼つきが気持ち悪くて、周はさっと視線を逸らした。
「よく、なんて言うほどじゃないです。そもそもあまり関わり合いにならないようにしてたから」
だいたい、トラブルを起こしたのは一度だけだ。
「ふーん、でもねぇ……君が角田君を殴った場面を見たっていう、目撃証言が出てるんだよねぇ」
ねちっこい、反論は認めないと言わんばかりの口調。
周は顔を上げ、真っ直ぐに相手を見て答えた。
「それは事実です。どうしても許せないことがあって、思わず手を出してしまいました。でもちゃんと、その日の内に謝罪に行きました!!」
「……いつの話?」
「えっと、確か……先週の……」
「あのねぇ、そんな曖昧な記憶じゃ話にならないんだよ。もしかして夢の中でそんなことがあったって言うだけの話なんじゃないの?」
「現実です!!」
周は思わずムキになって反論してしまった。
その勢いに気圧されたのか、刑事は少し黙りこむ。
「……とにかく、俺は角田を殺したりしていません。そもそも犯人は逮捕されたんでしょう?」
ニュースで言っていた。
だからこそ余計に、どうして今になって?
「ああ、そうだ。実行犯はな」
「実行犯……?」
「角田を殺してくれ、って言う依頼があった……そう言ってるんだ」
「……誰が、そんなこと……」
「君なんじゃないのか?」
「違います!! 俺は誰にもそんなこと頼んだりしていません!!」
「じゃあ、これはどう説明するんだ? 実行犯の携帯から見つかったやりとりだ」
机の上にA4サイズの用紙が2枚。それはメールかメッセージかの遣り取りを印刷したもののようだ。
1枚目。
wa:『角田、あいつマジきもい~』
kaz:『ほんとヤバいよね。頭おかしい』
SIO::『誰かさくっ、と殺っちゃってくれないかな』
wa:『えー、そういうのっていくらかかるん?』
Rain:『タダでやってくれる方法を知ってるよ』
SIO::『えー、マジで?!』
Rain:『簡単だよ。AAって狂信的なファンがいるでしょ? いつもライブに来てる、あの気持ち悪いオタク男』
kaz:『あー、知ってる!!』
Rain:『あいつに頼んだらすぐに引き受けてくれるよ。実はちょっと調べたんだけど……あいつ、いじめられっ子だったんだ。それで不登校になって引きこもりになったらしいよ。でもほら、詩織のために悪い虫を退治したら一躍ヒーローじゃないか』
SIO::『いいね、それ!!(笑)(笑)(笑)』
Rain:『できるだけ話を盛って、より一層殺意を覚えさせるように……こっちからAAに連絡取って依頼しとこうか?』
SIO:『それってヤバくね?』
Rain:『大丈夫、何のためのネットだって言うんだよ』
SIO::『匿名バンザイ!!(笑)』
誰だ、こいつら……?