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封印聖剣と精霊  作者: depression
6/6

特別講座(スペシャルクラス) (3)

学長は風魔が帰った後ワインを飲んでいた。外はもう日が沈んでいる。電気をつけていないので月明りが差し込んでいるのが解る。

そんな中、全身黒で彩られた男が入ってきた。

「学長はお人が悪い」

「何のことかな、理事長?」

「風魔君のことですよ」

吐き出すように言った。

「はて、彼とは何もないが……」

「とぼけないでください」

間髪を入れず言った。

少し間をあけて学長の顔が曇った。

「解ったよ。お前には敵わないな」

溜息交じりに言った。

「ようやく自覚しましたか」

笑いながら言った。

「お前の想像通りだ」

「やっぱりですか」

「だが……」

「彼、一応私が育て上げたのですから、大事にしてください」

学長は負けたといわんばかりの顔をした。

「私が育て上げたのですから勿論性能は抜群です」

「雄馬の悲願は近い」

学長は笑いながら言った。

「そうですね」


    ・・


「すまん白」

「反省してください」

「すまん……」

「もういいです」

「本当か?」

「嘘です」

「許して下さい。白様」

「あなたにとって私の存在意義は?」

何故俺はここまでひどい状況になったのか、事態は一時間ほど前まで遡る。



「ただいま」

「お帰りなさい、風魔」

白が出迎えた。

「ありがとう、白」

「こんなことなら毎日します」

「毎日はしなくていいぞ」

「じゃあ、時々ならやってもいいのですか」

「まぁ、時々なら」

「じゃあ、楽しみにしていてください」

『楽しみに』って……

そう、風魔は、怖い、怖い鬼のことが気がかりだったのだ。

「風魔、『楽しみに』ってどういうこと?」

そう、この鬼、玲美に。

「玲美、さん?」

「精霊に何させるの? 私も興味あるのよ」

絶対聞いていましたよね、玲美さん。

「礼儀作法を少し……」

「ふ~ん、嫁のように『お帰りなさいませ、ご主人様』と言わせるのが?」

玲美は真似をしながら言う。こういうのを見ると(以下略)

ちなみに俺の記憶が正しければ『お帰りなさいませ、ご主人様』はメイドが使う言葉だったと思う。少なくとも『嫁』が使っているとは思えない。もしそんなことをさせられているならやめるべきだと思うが……もし自発的行動だったら勲章をあげる。そして俺がもらう。嫁として。

「白」

「何ですか」

「貴方がやるなら私がやる」

(玲美さん、それ、色々と失っていますよ)

「いいえ。そうはさせません」

「いや、そうさせてもらいます」

「無理です」

「貴方がやめるべきでは?」

「初めに言ったのは私です」

「途中から来た分際で」

「仕方ないです。眠っていたのですから」

「寝坊さんではなく私です」

「いいえ、白がします」

きりがないことにようやく気が付いたようで、

「白」

「何ですか」

「こうなったら中立の立場の方に決めてもらいましょう」

(もしかして)

「やってくれますよね?」

指をさす。その先は……

「俺?」

自分に指をさして聞く。

「「うん」」

あ~きれいにハモッタ――――

「すみません、俺には難易度が……」

「拒否権はありません」

「……」


そして一時間(途中休憩有)で俺が謝るはめに……


「精霊」

白は顔をしかめた。

「もう一度チャンスをあげます」

「契約を交わした精霊」

少し顔が緩くなった。

「五〇点」

最終手段発動。

秘奥儀ジャパニーズ土下座。

「すみませんでした。今度なんでもおごるから許して」

「何でも?」

とてもうれしそうな顔。

(『何でもおごる』が効いた?)

「何でも」

頭をさらに下げていった。

「解りました。今回限りです」

顔を上げて喜んだ。

助かった。

「白マジで神様……」

「崇めてください」

「仏像でも何でも作らせていただきます」

白は満足そうだ。よかった。

「作るなアホ、バカ、変態」

玲美の恐ろしい声……

「死んで詫びろ」

(抵抗が……できないだと?)

「はい……」

言ってしまった……。

「許可もとったし、始めようか」

(許可って?)

「一応聞きますが、何を……」

又もや―――――――

     ・・


翌朝、謎の暴言(クラスメイトのことば)を聞きながら登校。

「彼奴だ!」

「例の……」

「もげろ!」

「爆ぜろ!」

   こんなに恨まれること俺、しましたか?

「おはよう!風魔」

……玲美?

「おはようございます、風魔」

……白?

(此奴らか)

「おはよう?」

「何でギモン形?」

「なんかごめん……」

「何で謝るのよ?」

玲美に続き白も頷く。

「何でだろうなぁ~」

 クラスの連中は、

「あれが例の……」

「マジでハーレム作って……」

「あれって校則に反していないのか」

「羨ましい……」

「妬ましい」

お前ら……

「はぁ~」

「風魔、どうしたの?」

「どうもこうも……」

まさかハーレム疑惑が…なんてことは言えないし……。

「ふ~ん」

「何だよ」

「何でも  」

玲美は少し顔を赤らめる。それに反応して俺の顔まで赤みを帯びてしまった。

「風魔君」

「何だよ」

「何かあったら相談してもいいわよ」

「えっ」

「だから……」

「だから?」

「もういい」

玲美は走って行ってしまった。

「何だよ」とつぶやきながら教室に向けて歩いた。

「さっき泣かせたよな」

「マジか……」

「俺の彼女を……」

お前ら……っ。

「はぁ」

もういいと諦めることにした。



「風魔君、さっきは急に逃げてごめん」

「もういいって気にしていないし……」

 本音を言うと、逆に助かった。

「やっぱりもういい」

投げやりな感じで言った。

あれ、俺怒られる要素あったっけ……

「玲美―――――」

「何?」

「俺ってやっぱりハーレムしているのかな?」

「何なのよ、急に」

……言ってはいけないと思っていたことを告げてしまった。

「それってやっぱり…私とってことかな」

「え?ごめん、最後の聞こえなかった」

「え、あっ、何も、そう、特に大したこと言っていないから!」

「え、そうか……」

「うん。そう!」

「でも気になるだろう」

 主に周りの反応が……

「彼奴〇ねばいいのに」

「俺の方が容姿いいと思うのに……」

「もげろっ!」

(貴様らっ)

「世の中には聞いてはいけないこともあるって知っている?」

いつもの玲美の顔に戻っていた。

(追求したら……以下略)

「あぁ。そうだな。やめておこうか」

「うん。その方がいいと思うよ!」

「そうする」

―――――助かった   

「授業始まるよ」

話に夢中でチャイムの音を聞きのがしたようだ。

「そうだな。じゃあ、またあとで」

「うん」

笑顔でいう。

―――――そしてチャイムの音同様気が付かなかったことがあった。

「彼奴なんだよ」

「玲美を一人占め?」

「何がハーレム」

「仲間だと思っていたのに」

「羨ましいそして妬ましい」

「爆ぜろ!」

最後の、特にひどいよね?

その一時間は眠気とクラスメイトとの耐久戦を繰り広げた。



「あ~酷い目にあった……」

「大丈夫?」

玲美が心配する。

ありがたいが……これを見られると……。

(って見てるし。もう手遅れ?)

「具合でも―保健室行く?」

(やめて、そんな発言!)

「彼奴、玲美と……」

「もう行為に?」

「玲美は俺の物なのに?」

「所有権は俺にあったはず……」

(最後の冗談だよね!)

「風魔君、で、あっていますよね?」

「はい、そうですが」

話しかけたのは隣のクラス、Bクラスの担任、和田(わだ)裕紀(ひろき)先生だ。体型がいいとこの学校では割と有名な先生だ。

「話は聞いています。素晴らしい成果です」

「ありがとうございました」

「今度私と―――じゃなかった。すみません。私情を加えて」

 一体、続けようとした言葉は何だったのだろう……………。

「いえ、そんなことは」

「じゃあ私と今度手合せしてもらえませんか?」

「先生の相手は務まりませんよ」

「これも教育の一環なので問題ないです。私も負けるかもしれませんし―――――じゃなかった、学長がお呼びです」

「俺に、ですか?」

見当はついている。しかし悟らないようにという配慮だ。それを理解したのか和田先生は俺とアイコンタクトをとった。

(先生も知っているのか)

「そうです」

少し間をあけて、

「それと風魔君」

「後で少し話をしたいのですが、できませんか?」

「いいですけど、何を?」

「それは後でいいでしょう」

「そうですが――――」

「じゃあ、オーケーでいいのですね?」

「まぁ」

「じゃあこの話は終わりです。話を戻しましょう」

「風魔君、また何かやらかしたの?」

「そんなことはないと思うけど……」

和田先生には聞こえない程度の声で話かけた。

もう一度和田先生とアイコンタクトをとる。

『どうしましょう?』

『こういうのは数多(あまた)の修羅場を潜り抜けた「プロ」の方が知っているのでは?』

(そんな目で見られていたのか)

『じゃあ、任せるね』

アイコンタクトは終了した。

(結局、解答はしてくれなかったな)

「じゃあなんで学長だけでなく和田先生にも呼ばれるのよ」

「で、何でそんなに羨ましんでいるの?」

「ど、どうだっていいでしょ!」

「まぁいいけど……」

「あ、ありがとう」

「どういたしまして」

「じゃなくて!何か絶対やらかしたでしょ」

「あぁ……」

「誤魔化さないで」

『どうしましょう?』

『プロには口出しする主義じゃないからね』

『役立たず』

『先生にそれはないでしょ!』

役に立たない先生。それだけでこの場をくりぬけないといけない。

(できるわけないだろ!)

「まとまった?」

「済まない。今は言えない。時期に――」

「時期にじゃダメ」

済みません。プロでも駄目でした。

「君が風魔君?」

「はいそうですが?」

「学長のところにはもう行ったのかい?」

「済みません。まだでした…………」

それだ!

俺は気付く。

唯一の道に。

「そうですね。急用でしたよねっ」

「はいそうですが」

「それは早くいかないと」

わざとらしく聞こえるかもしれない。

しかし、この場はこれで――――――クリア。

『ですよね』

『では、またあとで』

俺は学長室へと足を運んだ。



「これを見給え」

「これは?」

俺は何故か学長室に呼び出された。大切な休み時間を犠牲に    

初めは成績についてだと思っていたのだが  

「精霊出現のリストだ」

「精霊? 何故、俺に」

「貴様は書類にサインしただろう」

一枚の紙を取り出していった。

そうだった。忘れかけていた。

あのサインよりもその後にくらった玲美からの体裁の方が印象に強く残ったからだと思う。制裁での出血量はここでは……控えておく―――。

「貴様には今からここに行ってもらう」

「今からってことは午後の授業欠席ですか?」

「その件についての心配は不要だ」

その根拠聞いたらきっとショック受けるだろうな。

「貴様が休んでも成績は変わらんし、貴様の睡眠時間が削られるだけだ」

よく知っている。俺のこと。光栄?

「冗談だ。私が直々に補講してやる」

地獄だ。この前聞いた話だとうちの学長元鬼教師(現も)。暴力もためらいもないらしい。

「一ついいですか?」

「言ってみたまえ」

「ここってこの前精霊が出現した場所―――――ですよね」

「ああ」

「二回も同じ場所に出るのですか?」

「データから導き出された答えだ。多分あっている」

「はぁ」

しかしまだ疑問はある。

「何故早く行くべきなのですか?」

「民間のためだ」

それだけのはずがない。

「それならもう精霊封印者が現場に行っていると思うのですが」

「とにかく行け。帰ってきたら教えてやる。いや、勝ったらと表現しておく」

 つまり、俺の立ち位置の問題なのだろう。

「解りました。すぐに向かいます」

「しかし―――」

「何だ?」

「和田先生が練習試合をするようにと」

「ああ、そうか」

「無理ですよね」

少し考えるそぶりを見せ、

「いや、そっちを先にしておけ」

「そうですよね。優先順位はそっちが先ですよ――――えっ」

「どうした?」

「どうもこうもありませんよ。精霊より練習試合が優先だなんて」

「当然だ。和田なら尚更だ」

「はぁ」

「つべこべ言わず、さっさと行ってこい」

「解りました」

『行くぞ白』

『解ったわ』

『ティムも』

「ああ。行くぞ」

風魔は飛び出した。



「礼儀の知らない奴だ」

「本当ですね。行かせてよかったんですか」

「雄馬のところに逝ったらその時だ」

「本心じゃないくせに」

「先生、何か言いましたか?」

「いいえ」

微笑しながら言う言葉では説得力が足りない。

「その件は後にしましょう」

「ワイン、飲みますか?」

冷蔵庫を開けようとした。

「今日のすべての授業を終えてからにします」

「そうですね。よい乾杯でありますように」

「そうだな」

両者とも笑みを浮かべた。


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