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封印聖剣と精霊  作者: depression
5/6

特別講座(スペシャルクラス) (2)

「これで、今日の授業はおしまい……」

口を止めた。

一名(ふうま)を除いて」

視線は風魔に向けられた。

ちなみに風魔は夢の中。

「起きろっ」

「先生?」

「ぐっすりだね。よく寝られました?」

「それはもうもちろん」

判断が鈍った。

「後で、いや今すぐ職員室に」

地獄行き決定か?

いや、

「残念ですが今日は用事があります」

「言ってみろっ」

「今日はなんと学長室に行かなくてはならないのです」

皆が泣いている。

「今までありがとう」

「これからも頑張ってね」

「玲美は俺のものだ」

変な一言も交じっているが殆どが俺に対する―――――さようならの挨拶。って皆の中で俺は退学決定?

俺まで哀しくなった。

先生に視線を戻す。

「いえ、それは後でもだいじょーぶ。私から風魔君の体調不良だといっておくぜっ」

「先生、嘘は駄目ですよ」

「嘘じゃないよっ」

「俺今ぴんぴんしています」

「今じゃなくてこれからなるの」

「何に」

「肉体的体調不良に☆」

「それ、教師が言ってもいいのですか」

「――――――――――――ぷっ」

「絶対からかっていますよね」

「否定はしないわ」

そこは否定しろよ。

「冗談よ。先に学長室に行ってこいよ」

「先にってまさか……」

「私のは後回し☆」

「結局俺をいじめたいのですね」

「否定はしないわ」

「そこは否定しろよ!」

無駄な時間を過ごしてしまった。


     ・・


風魔は玲美に言われた通り学長室へと足を進めた。

(何されるのだろうか)

体罰?されるかも……だって、それに相応するだけのことはやったもん!過去に――。皆さんにはご理解してもらっているとは思いますが、一応。『今日は俺何もやっていない!無罪!』

ちなみにこれまではやっていますが   

どうしても、『さようなら、僕の学院生活』にはされたくない。

でも『じゃあね。僕の学院生活なら……』って両方同じ意味じゃないか!

この二つ(?)の可能性は……高い……?

風魔は頭を混乱させていた。

「入りたまえ」

学長だ。芯のある低い声で言った。

「失礼します」

この学校の施設は基本的に豪華な造りとなっている。

だが、個の学長室はもう1ランク、2ランク上だ。

ワインは完備されていることは前々から噂になっていた。風魔はそれを信じていなかったが目の前に五〇本を裕に超えているワインの瓶を見せつけられ、驚きを隠せなかった。

目の前にある二つの椅子も下手をすれば国会の椅子よりもいいものだ。机は大理石でできており風格がある。

(ここまで普通豪華にするか?お前どんだけ偉いんだ)

「かけたまえ」

風魔はあの豪華そうな椅子の一つに腰を下ろした。

(これ、壊れたら)

絶対やばい。

どうする? ピンチ!

「壊れていいんですか?」

風魔は口に出してから気づく。

(これじゃあ俺、壊すことを前提にしてしまっている……………)

「少し……少し変わっているね。若い時を思い出すなぁ」

(えっ、思い出しちゃうの?)

「テロリスト、だったんですか?」

(しまった~~)

 昨日のテレビでテロの話見てたから、勝手に口に出てしまった。

絶対終わった。

(卒業式、みんなと一緒に出たかったな)

「それには……いや、答えるわけには……学院の長としての威厳が……」

(えっ、マジ、で! テ、テロリストだったの?)

「マジですか」

あ~あ。こんな言葉遣いをしていたら    

「その話は後日にしてくれないか」

あれ、助かったの? と思いつつ、

「恐れ入ります」

一瞬、学長は安堵の溜息をつき、

「本題に入ろう」

切り替えが早い。これが年の功ってやつか。

「昨日の活躍、聞いたぞ。我が学院としても嬉しいことだ」

「ありがとうございます」

軽く頭を下げながら言った。

「さて、一ついいかな」

深刻な表情で言った。

「はい。何でしょう」

「お前は精霊と契約したのか」

「っ」

驚きをぎりぎり隠し通せただろうか?

知られたらどうなるのか?

大変なことになるのは確定だろう。

本来なら隠すべきこと。

だが、助力を得られる可能性もある。

選択を間違うことは決して許されない。

そもそも、学長はこのことをどんな手口で知ったのか。

疑問が湧く。

此奴、何処まで……

「解りません」

「もししているのなら――――」

学院長は算盤(そろばん)を引き出しから出した。

(古すぎるだろ、そのやり方そんなものにはかからない)

「このくらい出すがね」

いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん…以下略。

「こ、こんにゃに?」

 声が裏返る。

「こんなに」

「話す気になった?」

「元からそのつもりであります!」

敬礼してしまった。

あれ、引っかからないって言っていたって? そんなことは記憶にございません。

だってお金大事だもん!

「いい心がけだ」

感心したように言った。

「一つ……いいですか?」

「何かね」

「何故、俺が契約したということを知っているのですか?」

学長は何事もなかったかのように言葉を返した。

「契約したんだね」

「一応……したのだと思います」

満足そうに学長は答えた。

「それは名誉なことだよ。お前は精霊と契約している人間の数を知っているのか?」

白に聞かれてから調べてはみたのだがその手の資料は見つからなかった。

「俺以外いないと思います」

「うん。ある意味、正解だ。しかしそれは一般的にはだけどね」

どういうことだ。俺以外いないんじゃ……。

「どういうことですか」

「それは―――――――私たちと契約を結んでからだね」

「契約?」

「そうだ。これから契約してもらう」

「強制ですか」

「いや。我々はそんなことはしない。破棄してくれてもいいんだ」

「我々?」

「その話は契約した後だ」

「俺が契約するかどうかは保証できませんよ」

「それはない」

学長は余裕気に言った。

学長は金庫から、一枚の紙を取り出した。

近年では珍しい紙の契約書だ。紙の契約書は基本的に国家機密などの重要なことにしか使われない。ネット回線が発達したこの世の中では誰からも関与されない契約書の専用メールがあるからだ。

その契約書にはこう書かれている。


1・貴方は国家に忠誠を誓うこと。

2・貴方の身は国家の物であることを認めること。

3・以降の記述に嘘偽りのことは一切書かないこと。

①貴方の精霊の名

②貴方の名

4・このことの一切の他言を禁ずる。

5・一生懸命頑張ること


最後の言葉以外は問題なさそうな契約書だ。

「記名するか」

「考えておきます」

学長の顔がこわばった。

「貴様に選択の余地などない。この場で答えろ」

 口調が一変する。

(どうすれば……)

「時間がない。早くしろ」

口調がきつくなる。

俺は……。

もし、ここでこの契約をければ俺は元の普通の学院生に…………精霊の契約をする前に戻れるのかもしれない。俺の青春、学園ラブコメが、幕を開けるのかもしれない。(この可能性はゼロに近い)

でも、

―――――――白   

そうだ。彼奴は精霊の封印が目的だといった。俺はそれを手伝うといった。そして、彼奴は俺の復讐の手助けをしてくれると誓った。


そして力を貸してくれた。


(迷わない。情報が少しでも手に入るなら。前進するのみ)

もう決まっていたんだな、白。

「その話、ありがたく受け取ります」

学長は頷き、答えた。

「選択の余地はもとからないのだ。それが解っただけでも貴様としては上出来だ」

風魔は記名した。

「精霊は本名を書くのですか」

「いいや。解らないのなら呼び名でよい」

本名を書くと―――――後が厄介だ。

故に、『白』と一言書いた。

「これで風魔、お前は公式な精霊契約者となった」

(何のことだ?)

「どういう………」

「全世界で一八〇〇〇人以上の精霊契約者がいる」

「そんなに……」

(俺と同じように契約した人が……)

 現在、世界で精霊封印者は公認されている者では、約百万人いるとされている。内、一八〇〇〇人    およそ二パーセント。

(多い)

世界は広いと改めて感じた。

「そしてお前は一般的なネットワークでそれ相応の情報を得ることができる」

学長は引き出しから何か取り出して投げた。

カードのようなものだ。

「この番号でアクセスしろ」

番号は三三〇八二三と書いている。

「この番号に、ですか?」

答えは率直だった。

「そうだ」

風魔は早速アクセスした。

「これは……」

一目見て驚きを隠せずに言った。

「正直私も初めて見た時はあっけをとられた」

それもよく解る。

そこには一般では知らされていない情報が多々あった。

日本でも戦時中は余計な情報は伏せられていた。感覚としてはそれと同じである。各国が不利益とする情報は一般では伏せる。しかし精霊と契約している特殊な人は別である。精霊と契約した人   

即ち最前線で戦う人にとってなくてはならない情報が多々ある。

「すごい量の情報が手に入るのですね」

しかし返答は意外なものだった。

「これだけではない」

「どういうことですか?」

学長は答えた。

「君は……精霊祭については知っているかい?」

 精霊祭……あくまで祭りである。

 親善試合は多少行われているが……そんなに精霊契約とは関係ないように思える。

「情報はまだ手に入る」

(まだ俺の知らないことが)

「精霊祭に参加しろ、風魔」

「それはどうやって……」

「簡単なことだ。政府に奉仕すればいいことだ」

「奉仕って……」

少し嫌気のある顔で校長は言った。

「精霊を封印しろ。多ければ参加権が得られる」

(俺にはそんな力なんかないのに)

「雄馬の息子だろ、お前は」

思わず身を机の上に乗り出して言った。

「何でお前が知っているんだ。答えろ」

「落ち着きたまえ」

風魔は状況を把握した。

今目の前にいるのはこの学院の学長だ。しかも政府と内通している可能性が高い。国家レベルでない。世界の、もっと大きな括りで見た政府だ。

少し頭を下げた。

「済まなかった。つい雄馬の名を出してしまった」

深々と頭を下げて学長は言った。

「こちらの方が……」

途中で風魔の声はかき消された。

「お前は雄馬に似ている」

学長は席を立ちながら言った。

「えっ」

「そろそろ帰るといい」

風魔は差していた夕日が消えたことに気づいた。

「はい、そうします」

「そうだ、風魔」

「何ですか」

「また来ることになるだろう」

学長は初めて風魔に笑顔を見せていった。

「はぁ」

正直、学長が言った言葉の意味が解らなかった。


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