情報
「この時ばかりは妹が羨ましいぜ。」
「彼女は彼女なりに苦労はあるでしょ?」
「そうか?…今も気になる男のケツでも追っかけてるんだろうがな。
それにしてもあいつらも変わり映えしない連中だな。」
アグエロとエデンは長い廊下をゆっくりと進みながら目の前を会話もせずに進む兄達を見つめる。
「利害の一致か?」
「みんなアグ兄が怖いんだよ。市民のカリスマだからね。」
「あいつら曰く、愚民のカリスマらしいけどな。」
「国民あってこその国なのに。」
「それがわかってたら、あーはなんねぇだろ。奴らは自分が民の生活を成り立たせていて、自分が居なくなったらこの平和な生活は終わるぐらいに思ってるからな。
だからいざとなった時一人じゃ何も出来ねぇんだ。」
会話中、何度も慌ただしく急ぎ足で行き来する高官をアグエロは呼び止める。
「おい、なんかあったのか?」
「は、はっ!?とっ特には。」
慌てて立ち止まる高官は、額にうっすら汗を浮かべながら早く次の何かに向かわなければならないといったような雰囲気だ。
「特になにもないならここで暫く話していけ。」
じっとひ弱そうな中年の高官の瞳を覗きこむように威圧する。
「兄さん、そんなに睨んだらこの人が可愛そうだよ?」
蛇に睨まれたソレのように縮こまった高官の肩を優しくパンパンと叩くエデンは改めて問いかける。
「君の仕事を邪魔するつもりはないんだ。ただね…僕達のことは知っているだろ?」
「あっはい…もちろんでっす。」
「いずれ上に立つ立場の人間として、どんな些細な事でも知っておきたいんだよ。もしかしたら君も僕達のどちらかの専属の高官になるかもしれないだろう?」
ニコリと美少年スマイルを浮かべるエデン、その笑顔に邪気は全くない。
「せ…専属の?」
「そうさ、僕だって兄様達だって優秀な人を囲っておきたいからね。」
「専属…。」
高官はブツブツとしばらく自問自答すると、意を決したように口を開く。
「実は…。」
「そ、それでは私はこれで…。あの専属の件は…。」
「ああ、ありがとう。検討に値する情報だったよ。」
アグエロは足早に立ち去る高官の後ろ姿を呆れた顔で見下しながら
「ああも口が軽いやつを高官に雇用してるのは問題だな。」
「その御蔭で情報も得られたじゃない。申し訳ないけど側近としては失格だけどね。
でもさ、これってそんな大変なこと?」
僕にはよくわからないんだけどとエデンは不思議そうな顔をする。
「…どうだろうな。ただ、街を封鎖したくらいでなんとかなるとは思えんがな。」
《というか、もうこの街にはいねぇだろ…。嫌な予感ってのは当たるもんだな。頼むぞ…。》
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