姉妹
俺達の住んでいるこの街は闇が訪れてもある程度の明るさを保っている。
街路の光源は、ほとんどが巨大なロウソクだが、その材料や加工が元の世界とは違うらしく、かなりの長時間照らし続けることが出来る上、その本数も豊富だ。
もちろん夜、家の中を照らすのもロウソクだ。
優しい光だし、水の上に浮かべる形のものもあり、火事にはなりにくいので気に入っている。
ガスは存在しているようなのでいずれ文明の発展と共のガス灯のようなものも出てくるのだろうが、俺はこれが好きかもしれない。
「「こんばんわ~。」」
明らかに目を引く、タイプの違った二人の美女を家へと招き入れる。
食材と鍋を抱えた二人はそのままキッチンへと向かう。
「下ごしらえしてきました~。」鍋の中身は故郷の風土料理らしい。
早々にお手伝いを禁じられた俺は、ソファに無理やり座らされ膝に二匹のぷちを重り代わりに乗せられた。
ボーッとキッチンでせわしなく動く二人を見つめながら、なんとなーく元いた世界のことを思い出していた。
俺の家は一般的な家庭とは少し違った。
特殊というわけでもないが、職業柄両親が家にいることは少なかった。
家で自分以外の誰かが料理を作っているとシーンは見た記憶が無い。
ああ、言っておくが、別に悲しくも寂しくもなかった。
幼少の頃は覚えていないが、飯を誰かと食うというのはあまり好きではなかった。
好きなテレビを見ながら、誰にも文句を言われることなく好きなもんを食う。
小学生の頃から独身貴族の最近まで二十数年はずっとこれだった。
こっちに来てからだろうか、一人で食べる飯がまずく感じるようになったのは。
二人の間をトコトコと行ったり来たりしているコトを見る。
あれは手伝ってるのか?
邪魔してるようにしか見えん…。
ともあれ、そんな感情の変化をよそにシチュー的ないい匂いがしてくる。
それにしてもあの二人も…。
この世界は美形が多い。
何を美に分類するかという定義はあると思うが、この国は特に多国籍らしく様々な国の種族が入り乱れている。
とはいっても、獣人がいたり羽が生えてたりという訳じゃなく、種としては人なんだけど。
まぁ簡単に言うと、金髪の欧米人もいれば黒髪のアジア人、赤髪の東欧人もいるってかんじだと思ってくれればいい。
少し髪の色が元いた世界よりカラフルなだけだ…。
そんな中でもこの二人は中々の美女なんじゃないだろうか。
サラサさんは、腰まで伸びたストレートのロングヘアーはゴールドというよりは亜麻色に近い。
スッキリとした目鼻立ち、アート性の高い細身のラインは《モデルのような》と言った表現がよく合う。
元の世界なら細身のボーイフレンドデニムなんかをおしゃれに着こなしそうだ。
対してアヤセは深い濃紺のショートヘアが活発な彼女によく似あってる。
姉程の細身ではないがスタイル的には男好きする肉感的な体つきだろう。
本人はいつも自分のスタイルのことを《太い太い》と気にしているようだが、動くたびに揺れる二つの双丘は、健康的な色気を振りまくのに充分だ。
「出来た~!!」
そんなことを考えているとコトの元気な声が響く。
俺ぷち狂狐を肩に乗せ、重くなった腰を「よいしょっ」と上げる。
なんかオヤジ臭いが中身は親父なんだからしょうがない。
「あ~シロさんまだです!」
「これから煮込むからもうしばらくよ。」
…せっかく立ち上がったんだ。
全員分のカフェラテでも入れよう。
貴重な時間を私の拙い小説にさいて頂いて有り難うございます。
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