ごちそうさま
早朝まだ日が昇って間もない頃俺達は森に向かった。
朝の森は賑やかなピクニックと化していた。
鼻歌を歌いながら先頭を進んでいくコトと狂狐。
その後を追っかけ音を合わせ歌うアヤセに、まるで農作業に出かけるかのような荷物のおやっさん。
俺も残りの荷物を持ち、サラサさんが俺考案のサンドイッチのバスケットを手に殿を務める。
昔外国のドラマでそんな家族が森で暮らす話があったなぁなどと思いながら進んでいく。
ゴムの木の群生地までたどり着くとナイフで自分の腰の当たりの木の表面の皮を斜めに削っていく。
「ほぅ~。」
「へぇ~。」
すると白い樹液が流れだす。
「これがゴム??」
サラサさんが腰をかがめて覗き込む。
金色の髪が日に透けて一瞬ドキッとする。
「この樹液を貯めて、ろ過すればラテックスです。」
「らてっくす?」
「はい。それを加工すればゴムになります。まぁそこに至るまで問題はあるんですけど。」
そう、この後の加工過程が問題だ。
ともあれ、素材問題は解決されたんだ。まず少量から作っていこう。
「ここから大体一ヶ月位はかかります。」
「ま、そのくらいは覚悟してたわ。」
あっさり承諾してくれたサラサさんに多少びっくりした。
「私だって子供じゃないんだから、そのくらいは待てるし、正直もっとかかると思ってたわよ。」
サラサさんの下着に掛ける情熱からして、俺はまた首を絞められるかと思ってたよ。
樹液の受け皿に小さなカップを木にくくりつけ、その下にバケツを置いておく。
今日はとりあえず終了だ。
「おーい、コトー。飯だぞー。」
遠くで走り回っているコトと狂狐を大声で呼ぶ。
「元気ですね。」
アヤセがバスケットの中身を広げながらお茶を入れている。
「まるで野生児だな。」
「あははは。そうですねー、まるでこの森に住んでたみたい。」
「アイツは森育ちだからね。」
「え?」
「此処じゃないけど山森の中にある村で育ったんだ。だからこういう場所があってるんだろ。」
「知らなかったなぁ。」
少し悲しげな表情を浮かべたアヤセだがすぐに元気な声で
「用意出来ましたよー。」
そうおやっさんにも声をかける。
アヤセはとても優しい娘だ。
表情が豊かだし、明るい。その分感情が表情に出すぎたり相手に感情移入してしまうが、それも彼女なら弱点になりえないのかもしれない。
彼女の髪の色が自分に近いことが親しみを感じさせるのだろうか。
みんなで朝食を食べる。
外で食べる食事は新鮮な味を感じさせてくれる。
最近食べ慣れたスモークチキンサンドもなにかうまく感じるのは何故だろう。
「「「ごちそうさまでした!」」」
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