王都?
「…王都へ?」
「はい。こちらが召喚状になります。」
俺は差し出された上質な紙を手にとった。
うん。手にとってみただけだよ。俺はこの世界の文字初めて見たし…。
普段の生活で数字しか見たことなかった。
これ…破ったら怒るかな?
なんとなく目の前の中年の男性と目が合う。
衛兵とは明らかに質の違う制服に腰に下げたフランベルジュは実用的というよりは未使用の美術品のようだった。
王都の役人という話だが、ここまで違うもんかというほど高級感とあからさまではないもののどこか見下した態度がひしひしと伝わってくる。
「王都へ行って何をするんでしょうか?」
「は?」
「ですから。王都へ行って俺は何をされるんだろうと。」
「それは私共の知るところではございません。」
いいからさっさと来いって感じか…。
まぁ、お役所仕事なんてどこもこんなもんだろうけど……気に入らないな。
「今すぐですか?」
男は少しニヤリと嫌らしい顔をすると
「…そちらの召喚状に書いてある通り三日後となっております。」
こいつ文字も読めないのかって感じか。
よし!決まりだ。いかね。
「申し訳ありません。拒否することは?」
「出来ません。」
乱暴な…。
「……。」
俺が明らかに不満気な顔で何かを言いかけた時、目の前の男の後方から声が掛かる。
「おいおい、いつから学者の召喚状を王都からの召喚状って呼ぶようになったんだ?」
ひょこっと見知った顔が役人の頭越しに現れた。
「アグエロさん!?」
アグエロは役人の肩を抱く。
「は!?ア…アグエロ!?」
ガッと抱かれた役人の顔面が一瞬で蒼白となる。
それもそのはず、今自分の肩を抱きしめているのは、王都で知らないものは居ない存在。
次期国王候補の一人。
それも自分の上司が《最悪》と称する、貴族不人気ナンバーワン、下民人気ナンバーワンの男。
「…様。」
更に追い打ちを掛けるかのように素早く喉元につきつけられた小刀は軽く役人の皮一枚をスッと切り裂く。
現れたのはメイド服の女性。
見た目はおとなしく可憐。
三つ編みに丸い眼鏡。
そばかすのある頬はどこか初々しさを残した少女のようだった。
「様をつけようか?」
「ひぃっ…ア…アグエロ様。」
「そう、それでいい。」
そう言うとメイド服の女性はちらりと俺を見て少し眉をピクつかせた気がした。
更新が遅れました。
本日はもう1-2回更新できるかと思います。
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