再び
その間に男は少し希望を覚えた。
この距離まで近づけた冒険者はいないはずだ、まだチャンスはあると。
俺は頭がキレる。さすがだと。自画自賛しながら
「剣を抜け!!弓はその場でいい矢を放て!!」
この選択が彼らの命運を分けることとなる。
狂狐は基本戦闘放棄をし、その場を離れるモノを追いはしない。
コトを狙われたことで多少イラッとしたものの、そこまで狂狐は人間に興味が無い。
再び至近距離で矢が放たれる。
狂狐は片手で招き猫のようなポーズで無気力に腕を振り下ろした。
『バシッッ!』
「はっ?」
「……。」
今見た光景にその場にいた誰もが目を疑った。
ただ無造作の振り下ろしたそう長くない前足は触れる距離にない弓矢を風圧だけで全てたたき落とした。
そのままペロリと前足を舐め、「まだ何かするの?」という表情で目の前の冒険者達を見る。
それでも後ろで気を失っているコトをかばいながらの戦闘に光明を見出す男は
「後ろのガキを狙え!」
相手が人間ならば「卑怯なやつ」と蔑まれるような発言も動物相手には関係ない。
弓が射られるその刹那。
狂狐の体毛がブワッと膨らみ、飛び散る雨の雫が金色に光る。
すると狂狐の中から何かが飛び出してきた。
「うわああぁぁぁっ!!?」
――――――
冒険者達の野太い悲鳴が響いてる頃。
俺の目の前には予想し得なかった男達が立っていた。
「森が騒がしいと思えば…またお前か。」
体長二メートル、体重は有に百を超える。
それでいてその質量のほとんどが筋肉である。
誰が見ても屈強、それが二人。
色違いのお揃いの軽鎧を身にまとい、髪型からその筋肉の質までそっくりな、まるで仁王像が二つ並んでいるかのよう。
「マッスルブラザーズ…。」
いつものように後方に控えている弟がずいっと前へ出てくる。
「おうおう。此処であったが百年目!」
めんどくさい奴らに会っちゃったな…。
まるでコンビニ前で屯してるヤンキーにからまれてる気分だ。
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