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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
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憂鬱は長く

 コトはいつもの様に森へ来ていた。


 シロはもちろん、ここ数日はアヤセも小うるさくなってきた為か一人で来るようになった。


 首に下げたポーチには燻製と水筒が今日も入っていた。


 コトは雨を気する様子もなくびしょ濡れのまま、泥濘を避けながら進んでいく。


 「とうちゃんはなんもわかってない。」


 子供の頃、いや大人になっても誰もが経験があるであろう、嘘を正当化させるために虚偽の真実げんえいを自分に見せることで、自分は間違ってない。こうしなければ仕方なかったのだと言い聞かせる。


 コトは胸の奥がチクリと傷んだ。


 ギュッと小さな掌を握りしめながら、いつもの場所へと急ぐ。


 「よいしょっと」


 目の前の石に持ってきた燻製を広げようとしたが


 「あっ」


 そう今日は雨だ。石の上の水たまりに置かれた燻製はあまり美味しそうには見えない。


 燻製を手に握り

 

 「うん。だいじょうぶ。」


 だいぶ仲良くなった。至近距離で話もした。だがまだ触れたり、自らの手でエサをあげたことはなかった。


 今日は中々現れないなと思いつつ、さすがに雨の強さから木陰へと身を移した。


 


 あめはひさしぶり。


 あめはえものがいなくなるからきらい。


 けど、とうちゃんにあってからごはんはとるんじゃなくて、でてくるのにかわった。


 とうちゃんはなんでキツネをきらうんだろ。


 キツネとおさんぽしたいな。 


 もふもふってだきしめたい。


 おふろにいっしょにはいって、おふとんでいっしょにねたい。


 とうちゃんともなかよくなるといいな。




 『カサッ』


 「あっ!」


 コトは、やっと現れた狂狐を嬉しそうにみつめる。


 狂狐もコトを見つける。表情は変わらないが尻尾がゆらんゆらんと二度三度揺れる。


 しかし、狂狐は辺りの臭いをかぐように空気を深く吸い込んだ。


 一度前足で顔を洗うようにひと撫ですると、コトの横にぺたりと座った。


読んで頂いてありがとうございます。

評価、ブクマして頂くとより多くの方に読んで頂けるきっかけになり、筆者のモチベーション維持に役立ちます。


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