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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
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急襲

 『ギリッッィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ』


 「撃て!!撃て!!」



 濡れた枯れ葉が舞い上がる。


 彼等はもうそれしか見えていない。


 それがなんなのか、ただ子供の頃からみなが言っていた。


 「そいつを倒せばこの国の勇者になれる。」


 大の大人が小動物を追回す。


 まるで残酷なイジメのショーになりそうなシチュエーション。


 だが、その小動物は今の今まで傷ひとつ追ったことがない。


 あの《蒼炎》でも傷ひとつ付けれなかった。


 そうやってまた伝説に拍車がかかる。


 「あれを倒せば。」


 「あれに傷を負わせれば。」と



 きしんだ弦は一瞬の緊張感のあと、唸りを上げる。


 やじりから水滴をまき散らし、無数の矢が放たれる。


 数えきれない数のそれが、目指した先は獣と人の子。


 

 男が見たのは偶然だった。


 白い狐と人の子との邂逅。


 男は目を疑った。


 人の子が狂狐に何かを話してる。


 見たのは一瞬だった。しかしそれが強烈に男のまぶたに焼きついた。


 男は次の日、荷物を抱えて森へはいった。


 自分が見た光景が本当か確かめるため、いや、確かに見たのだ。それはわかっている。


 ただ、それを認識していても嘘だと思えてしまう。


 それ程にあの場面は、にわかに信じがたい真実として心に沈殿した。


 しばらくして男は確信した。


 「俺はツイてる。」


 今度こそ、あの狂狐を討つことが出来るかもしれない。


 あの伝説のパーティーも、蒼炎でさえ何も出来なかったと言われている狂狐を討てる。


 男は興奮していた。


 すぐ街に帰り、パーティーメンバーにすべてを話し襲撃プランを練った素早く入念に。


 男とそのパーティーの六人は一つの壁にぶつかった。


 だが結論は意外なほど早く、そして簡単に出た。


 その答えに全員一致で頷いた。




 「悪いなガキ!!」


 悪魔の様な笑みで一人と一匹を見つめる。


 男は見逃さなかった。


 「あのガキがいる時は俺が視界距離に入っても、警戒はするものの逃げはしない。

 そして何よりあの狐、一度だけだがあのガキを俺から庇いやがった。」


 男が一度だけ武器を手に必要以上に近づいた。


 その時狐は一度は逃げる素振りを見せたものの、すぐに人の子の周りを回り始め警戒を諭した。


 無数の矢と共に怒号ともとれる叫び声と刀を抜くかすれた金属音が響いた。


 『ギリッッィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ』


 弓は言ってみれば銃と変わりない。


 ある程度の腕を持った射手が見えない場所から知らぬ間に撃たれた弓を避けるすべはない。


 よってこの世界では暗殺の手段によく使われるというのもその点だろう。 


 「撃て!!撃て!!」 


 矢継ぎ早に放たれる矢は時間を置かずして目標物を捉えることになる。

 

 「やった!!」


 静まり返る森に雨の落ちる音さも一瞬やんだ気がした。


 獲った!男はそう確信した。


いつも読んでくださってありがとうございます。

初見の方は楽しんでいただけたでしょうか?


体調を崩して、更新がずれ気味です。

次の更新は翌日の朝になります。

少し無理をしすぎました。

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