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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
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おやじと亀


 「まだ豆はある、好きなだけ持っていけ。」


 「え?いいんですか?」


 「今回だけだ。

 次からは金を取る。」


 金を取るらしいが、どうやらこの親父はカラフェ豆を今後都合してくれるらしい。


 「ありがとうございます。

 それとこれなんですが…。」


 と、カップを突き出す。


 「このカップがどうかしたのか?」


 「これ鉄ですよね?

 おやじさんが作ったんですか?」


 「確かにそいつは鉄だ。

 だがそれに関しては、俺が作ったもんじゃねーな。

 ある男から譲り受けたもんだ。」


 「そう、ですか。」


 少し残念そうに俺はカップを眺める。

 

 このカップは作りが他のものと決定的に違う…。

 

 間違いない。

 これは、合金鋼だ。

 所謂、ステンレスのことである。


 まっ、いいか…。

 別にこれが作れても作れなくても、俺に大事なのは。


 「鉄製のフライパンと鍋と、それと同じポットが欲しいんですが。」


 「…大きさはどうする。」


 「えと…一般的な一人暮らし向けのやつを。

 ちっさい子供と二人なので。」


 「ふむ…。」

 

 と顎に手を当てひと撫ですると。


 「三日だ。」



 ――――――


 その頃、シロ宅。


 「Zzzz…。」


 まだ何もない広い部屋の真ん中で、タオルを腹にかけられて寝ていた子供がむっくり起き上がる。

 瞼をゴシゴシしながら、周囲を見やる。


 「…父ちゃん?、ここどこだ…。」

 「父ちゃん?、父ちゃん!?、父ちゃん?!。」


 タオルを片手に引きずりながら、泣き出しそうな顔でバタバタと歩きまわると、急にピタッと立ち止まり。


 「ああ、ここは新しいトコだ。

 それで…父ちゃんは買い物だ。」


 ちょこんとその場に座ると。


 「お留守番とは…家を守ること。

 そうだ!守らないといけない。」


 瞳をキラリとか輝かせ、再びむっくり立ち上がると、部屋の隅に無造作に置かれた自分の身長以上の荷物の山に身を投げ入れ何かをあさり続けた。



 ――――――


 金物屋で大量の豆とドリッパーを譲ってもらった俺は、そのまま急ぎ足で自宅へと戻ってきた。

 

「ちゃんとあのまま寝ててくれるといいんだがなぁ。」

 

 『ガチャリ』

 

 カラフェ豆の袋を下げたままの腕で玄関ドアを開ける。

 

 「……。」


 なんでコイツこんなトコで寝てんだ…。


 玄関ドアを開け飛び込んできた景色は、大きな盾を掛け布団代わりに「ウー、ウー」うなされつつ熟睡するよだれを垂らした青い髪のガキだった。


 玄関入り口目一杯に両手両足を広げたまま、盾に押しつぶされて寝ているガキはシュールな光景だ。


 「亀…か?」


 シロはクスリと笑うと、重そうに乗せていた盾を拾い上げ壁に立てかけると。カラフェの豆をその場において、青い髪のガキをひょいと持ち上げて居間へと運んでいった。


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