女難
メイン通りの一角にあるはぎれ屋、結構な量の布地を抱えた二人が会計待ちをしていた。
「こんなに買ってどうするんだい?」
店員に問いかけられるが支払いをする修道服の少女は特に答える様子はない。
隣にいるリオンは苦笑いを浮かべながら、会計の済んだ布地を手持ちの袋に詰め込んでいる。
すべてを詰め込み終わり、店の外へと出る。
「結構な重さだね。」
リオンが持った分以外にも、ティファが両手に抱えた糸の山。
「どこかに寄ってってわけにもいかないね。」
「…ん。」
予定では軽く食事をして帰るつもりだった二人は少し残念そうに宿の咆哮へと足を向けた。
『ササッ』
「え?ええ??うっぶっ。」
少し歩いた十字路でティファが素早くリオンの口をふさぎ、狭い路地へと引きずり込むように動いた。
息を潜める様子にリオンもタダ事じゃないのだと動揺する心を落ち着け、息を整える。
リオンの専門は闘うことであり、索敵、隠密という意味ではティファが蒼炎の中で随一だ。
ティファが無理といえばそれは無理。
ティファがやれるといえばどんな無茶でもやる価値がある。
それが蒼炎の決まり事。
そのティファのいつにもまして真剣な表情に、状況の深刻さを物語る。
リオンは状況把握に務めるが、依然として何もつかめない。
仕方なくリオンはティファに問いかける。
「ティファ…どうし」
「シッ!」
黙れとティファはその口唇に人差し指を立てる。
そして、その人差し指をゆっくり真っ直ぐ前へと倒す。
「??…あれは。」
ティファの指の先に視線を移すと、そこには。
「シロくん?と…。」
そしてシロと見知った少女が並んでリオンたちの宿とは逆方向へと歩き出した。
「…リオ。大切な用事…思い出した。これ。」
片手で抱えていた糸の束をリオンに押し付ける。
「ぅぉ!?おいティ…。
はゃっ!!」
すでにそこにはティファはおらず、脱兎のごとくだが、二人との距離を絶妙に調節しながら消えて追った。
「……大切なって…。それ、ただの尾行じゃないか…。」
布と糸にまみれた蒼炎のプリンスは暫くうなだれ、女は怖いなと心底思うのだった。
「シロくん。女難の相が出てないか?。」




