咬み合わない
ショートながら55話まできました。
「あなた、魔法使いに憧れてるんでしょ?」
「はい?」
「違うの!?《てっきりフードなんて被ってるから憧れてるのかと思ったのに》」
ああ、これが勘違いさせたのか。
そう思いフードの紐を弾く。
「あぁ、憧れてる…といえば憧れてないわけじゃ…。」
「なんだ、やっぱり。じゃぁ問題ないじゃない。」
「いや…。」
ここはあまり俺が来たことがないちょっとお高めな店の一室。
この世界の高級レストランだろうか。
貸し切りの個室には、俺と金髪ショートの活発そうな少女。
俺とその娘との間にあるテーブルには先程運ばれてきたパンケーキのような軽食とよく冷やされたフルーツジュース。
こんなところがあるのか…。
値段は聞いちゃいけないんだろうな~。
パンケーキの味は…微妙かな。パッサパサだし甘さが足りない、もっと美味しく出来るだろうに…。
などと素直な感想は口には出さない。
「嬉しいんだけど、こんな高そうなもの…大体そんなお礼されるような事をした覚えが…。」
「はぁ!?」
「……。」
数秒見つめ合い、呆れたように少女は何かを言いかけその口を閉ざす。
椅子を引き、膝においていたナプキンをテーブルに置くと少女は立ち上がる。
一息間を置くと、シロの座ってる席の側まで行き優雅に一礼する。
「シロ。あの時は助けてくれてありがとう。
あなたの働きに感謝を。」
呆然とするシロに、少し不満げに「ああ。」と何かに気付いたかのように少女は微笑んだ。
「コレね。これだとわかんないわよね…まっ変装用に着けてるんだから、それで正解なんだけど。」
なにがなんだか、というシロを置き去りに少女はドンドン話を展開させてしまう。
「これでわかるでしょ?」
『バッ』と金髪を取ると中から真紅のロングヘアが『ファサッ』と落ちてくる。
目を丸々と見開いて硬直するシロを満足気に少女は自分の席へと戻っていく。
「ああもう、とかしてないし…一度取ると大変なのよね…コレ。一人じゃ付けれないし。」
この時二人には明らかな認識差があった。
シロはただ単に金髪ショートの女の子から、燃え上がるような真紅の美しい髪が現れたことにびっくりしていた。
対して少女の方は真実の自分を見せることによって自分が誰であるかを示したつもりでいた。
「…えっと。よく…わ、わかんないんだけど。」
「はぁあ!?」
『バンッ』と思わずテーブルを叩く。
「あんた私を知らないの!?」
どうしてこうなったのか…。
おやっさんの言うとおりに素直に貰っておけばよかった。
祝55話 ゴジラの背番号ですね
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