ローブ
「とりあえずこれをどうしようか。」
目の前のポールスタンドに掛かっている、茜色のローブ。
手に取ればその生地の高級感にびっくりする。
「カシミアに近いかな…。」
フード部分の裏地には金色の糸で刺繍がある。
こんな作りの良い服も存在するんだな。
問題はこれをもらった経緯が俺にはよくわからない事だ。
どうもティファの魔法の直撃を受けた時に受け取ったらしいんだが、正直なにも覚えてない。
後から聞いた所によると、あの時現れた女の子のお礼だとか。
あの娘に関しては、リオンさんの旧友の妹ということと、リオンさん同様おやっさんと何らかの繋がりがあることくらい。
「こんな高そうなもの貰う理由がわからない…。」
返すにしても、何処に住んでるのかもわからないし。
「とりあえず、おやっさんトコにでも行ってみるかな。」
――――――
「貰っておけ。」
「そうはいっても…。」
「送りもんを返すというのは、敵対行為を示す。逆に失礼に当たるぞ。」
そういうもんなのか。
そうだとしてもこんな高いそうなもの。
「お礼だけでもしたいんですが、おやっさんあの人の家知りませんか?」
「…やめとけ、大体そいつはお前への礼なんだろう?」
ドヴァーリンはシロの手に持たれているローブを見る。
《家と言われても、あいつらの家は城だしな。それにしてもまた厄介なもんを渡したもんだな。》
「じゃぁ、もし会ったらお礼だけでも伝えといて下さい。」
と言い残し俺は工場を後にするが、数分後そのやりとりも水泡に帰す。
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