噴火
今年もあと一ヶ月ですね。
「なぁ…。」
「一人ではダメ。」
「なぁ。」
「ダメだ。」
コトはあれから事あるごとに、森に行きたがる。
森というかあの白狐だ。
それでもあれから何度かは森に行った。
そのうち飼いたいとかいいだしそうで怖い。
別に動物は苦手じゃない、むしろ大好きだ。
元の世界ではハムスターや小鳥は言うに及ばず犬や猫、果てはフクロウやモモンガまで飼っていたほどだ。
だが、野生のものは野生のままの方がいい。
変に餌付けなどしてしまうと、自分で餌を取ることを忘れてしまう。
そして人を怖がらなくなるのも、野生としては致命的だ。
「ううう…。うがああああああ。」
うお、遂に噴火した。
玄関へ脱兎のごとく疾走する。
「お~い。一人でいったらダメだぞ~。」
「となり!」
『バタンッ』
おお~、すげぇ怒ってる…反抗期。
しばらくしてコトが援軍を連れて帰宅した。
「私、狐って見たことないんですよ~。」
ニヤリと悪い笑みを浮かべるコト。
アヤセを連れて行く気か、少しはワル知恵が働くようになったようだ。
「女の子と子供だけじゃ危ないからダメ。」
『プーーーッ』
コトの顔がみるみるうちに赤くなり、頬はパンパンに膨らんだ。
「あがあさががががあああ!!」
わけのわからん奇声をあげて、部屋を出て行った。
「あれ…。いいんですか?」
「ほっとけばいい。」
「ハハハハ…。お、おじゃましました~。」
困った顔でアヤセは出て行った。
次はサラサさんでも連れてくるだろうか。
女性はダメだと思ったならそれはないか。
とにかくそんな頻繁にあの森に行くのはごめんだ。
狩りでもするなら実にもなるが、他にやるべきことが今はあるわけで。
コトには少し我慢も覚えてもらわないといけない。
コトの不機嫌さはしばらく続き、俺とコトの無言戦争は隣人にも飛び火しつつ、多大な迷惑をかけ過ごすことになる。
貴重な時間を私の拙い小説にさいて頂いて有り難うございます。




