もふもふ
『ジィィィィィィ』
睨み合う、コトとなにか小さな白い獣。
威嚇する様に全身の毛を逆立てる姿は小さくても迫力がある。
コトは立ち上がることもなく四つん這いで徐々に後退する。
ある程度の距離を取ると草木の中に身を沈める。
白い獣は、まだ警戒を説いてはいないが平らな石の上に置かれた紙の包みの匂いを嗅いでいる。
ゆらんゆらんとしっぽが揺れる。
コトはその様子をみながら
「あれはなんてやつだろう。」
恐怖よりも興味が勝ったのか、じっとその獣の食事風景を見ていた。
「コトーーー、おーーい。」
『ダッ』と獣がその場から素早く身を翻す。
「あぁ…。」
立ち去る獣の姿にがっくりうなだれるコト。
『ガサガサッ』
「おーー…い?コト!?」
「とうちゃん!ダメでしょ!!ダメなんだからダメでしょ!!!」
「…え?」
なんで俺が怒られてんの?
――――――
「あれは…狐だな。」
「きつね?」
でも、白い狐か。
白いやつってたしか寒い地方にいるんだよな?
よく白狐や九尾なんて妖怪がアニメや漫画で描かれるけど。
「村の森にタヌキがいたろ?あれのライバルだ。」
「おお~。たぬきのゆうじんか。」
「ん。まぁ違うけど似たようなもんだ。」
あの後、こっぴどくコトに怒られた俺はやっとなんでコトが起こってるかを理解した。
再び、平らな石の上に俺の分のジャーキーとチーズを置いてある程度の距離から観察中というわけだ。
そろそろ辺りも暗くなってきた。
視界に影響が出る前にこの森を出ないとな。
「コト、そろそろ帰るぞ。」
「もうすこし。」
何が面白いのかコトは白狐にご執心だ。
「…もう少しだぞ。」
「うん!!」
「「あっ…。」」
コトの返事でびっくりした白狐はそのまま森の奥深くへと消えていった。
がっくりとうなだれるコトを尻目に。
最後に一度、こっちをみて頭をピョコッと下げたような気がしたのは、きっと気のせいだろう。
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