一階
一階
「おう、コトやっと起きたのか。」
「じぃちゃん!!」
サラサの手を離し、ドワーフのもとへと特攻していく。
『ドフン!』
「カッ。元気だな。」
「コトはずっとげんきなかった。とうちゃんにおこられてた。」
ドワーフの腰のあたりにしがみついたまま顔を割腹の良さそうな腹にうずめながら
「じぃちゃんにもあやまらないといけない。コトはじぃちゃんがとろろまきにしてた、くんせーをたべてしまった。」
「それで小僧に怒られたのか。どれを食ったんだ?」
「たまご、いまコトはたまごきんれいがでてる。もうじゅっこくったから。」
「十か。くっくはははははは。」
「おい、あの人あんな微笑う人だったのか?」
「…僕もはじめて見たよ。それ以前にそれ程ドヴァーリン殿に詳しい訳じゃないけどね。」
「まぁな。そうそう伝説クラスの人物と親しく出来るもんじゃないだろ。師匠に師事してなかったら出会うことすらなかった人物だ。」
「その師匠も伝説そのものなんだけどね。」
「ああ、しっかしコレうまいな。なんなんだこの深い味わいは。コレで保存食だと?」
リオンとアグエロは目の前に並べられた燻製を口にする度、自分達が食べたどんな高級料理よりも好ましいと思っていた。
「まだ、話てもいないが…。」
「ん?なんだい?」
「お前が師匠に似ていると言ってたことだ。少しわかる気がする。」
「そう。」
「師匠は人を惹きつける人だった。別に何するわけでもなく、優秀な奴らが集まってくる。」
「…うん。」
二人の視線は自然と天に向く。
「俺が言うのもなんだが、名を残す王や名将軍ってのは、決まってそういう力を持っている。
…俺にはそれがねぇ。だから俺は王をやらんと決めた。
妹曰く、『そんなこと言ってるからダメなのよ』らしいがな。」
「アグエロは真面目だね。」
「なんかしめっぽくなっちまったな。向こうで飲もう。伝説と杯を交わす機会なんてそうないぞ。」
コトはじぃちゃんが大好き。
とうちゃんの次に。




