リオン再び
「ひさしぶりだね。」
「あ、え~と。」
この人名前なんだっけ…。
俺は元の世界にいた頃から、人の名前と誕生日を覚えるのが苦手だ。
別に興味が無いわけじゃないし、覚えようとしてないわけでもないんだが、いつのまにかすっぽり抜けてしまう。
よく仕事では、取引先の相手の名前を間違え上司に叱られ。
彼女の誕生日を間違え死ぬ程怒られ翌年も懲りずに忘れてしまい別れ話にまで発展した。
「あははは、リオンです。」
困ったなという表情でリオンは軽く言葉をかわす。
「あ、ああ、すいません。命の恩人の名前を忘れるなんて。」
「気にしてませんよ。しかし、本当に…そんな所まで師匠に似てるなぁ。」
カラカラとよく笑う人だ。
しかし、行き交う人がチラチラと俺達に視線を寄せる。
街のメイン通りの真ん中で名のしれた人と話していれば嫌でも目立つということか。
それにしても本当に、この人は有名なんだな。
「今日は?」
「ああ、今度家で料理の試食会件飲み会がありまして、お酒の注文に。」
「へぇ。君の仕事は、料理人なの?」
「いえ、下手の横好きですよ。」
「あははは。面白い言い回しをするね。今度使わせてもらうよ。あれからからまれたりはしてないかい?」
「はい、おかげさまで。」
「…でも飲み会かぁ。懐かしいな。」
有名人になると、気軽に飲み会も出来ないのだろうか。
芸能人みたいなもんか?
まぁ、一々こんだけ注目されてたら気を抜く暇はなさそうだ。
「…あの。」
「あの時は楽しかったなぁ。あ、なんだい?」
「よかったらご招待しますよ?あまり食べたことのない料理だと思うので口にあうかは別ですが。」
「!?いいのかい!」
「え。」
ガシッと抱きしめられた。
そんなにうれしいのか?
「え、ええ。」
「じゃぁ、お酒の注文を付き合うよ。」
あはははと軽快な笑いが響く中、右腕をしっかり掴まれ酒屋へと引きずられていく。
この後、家の場所を書いたメモを渡すとリオンは上機嫌で再び雑踏の中へと消えていった。
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