お兄ちゃん
同じくときは遡り。
絢爛豪華な装飾に囲まれた部屋で不思議な会話が交わされる。
「なに!?」
「わかったのか。不穏な動きだと?…魔法?はっきりいえ!」
「そ…それがわからないのです。急に謎の箱から煙が…。」
「他には?」
「部屋からは奇声が…。その後子供が泣き叫ぶような声と。」
「…。でその煙は有害な魔法だと?」
「いえ…。特に周辺住民も集まっておりましたので。その後も特に人体に影響が見られることはなく。」
俺は頭に手を当てる。
「それのどこが不穏なんだ。確かに奇声や泣き声は気味が悪いが…。」
それぐらい普通だと、師匠との生活で慣れてしまった自分が嫌だ。
「更にめんどくさいのが来たな…。ハァ」
突然、ドアがけり開けられる。
『バンッ!!』
部屋を見渡す。
「チッ遅かった?」
そこに偉そうに座する男へと視線を移す。
「お兄ちゃん!影を使ってるでしょ!?あれは私のでしょ!!」
思わず大袈裟に耳と塞ぐポーズを取ると。
「…お前な。仮にも…。」
「うっるっさっいっ!」
「うおっ!」
『ザクッッ』
なんか飛んできた!コワッ!この女!なんか刺さってるぞ、後ろ!
「お兄ちゃん、何を調べてるの?お兄ちゃんが影を使うなんて。何でも正面から行く脳筋バカのクセに。」
「おいおい、ひどい言われようだな。俺だって時には頭脳戦く…。」
「ない!無理!絶対!そんなことが出来るくらいならもっと人間関係うまくやってるもん。」
「……正論だ。」
「お兄ちゃんの味方は私しかいないのに!私にまで隠し事!?」
断定された。俺の味方はお前だけかよ。
「荒事じゃねーよ。リオンの奴に頼まれただけだ。」
怪訝そうな顔をする妹は、黙っていればとても可愛い。
いろんな女を抱いてきた俺が身内を褒めるのもなんだが、妹は客観的に見てもかなりの美少女だ。
おとなしくドレスを着て、ちょこんと玉座の脇に座っていれば次期お姫様候補人気ナンバーワンもうなずける。
粗暴な割に以外にも男ウケがイイ。身体は…まぁまだ子供だがいずれイイ女になるだろう。
「…リオンに?」
「そうだ。リオンが気になる奴がいるっつーからちょっと調べただけだ。」
少し考えた風に首をかしげる目の前の妹。
「…それ…頼まれてなくない?」
「あ~。友人を気遣う心優しい男ってトコだ。」
ガシガシと頭をかく俺に。
「エゴね。結局は人をネタにして楽しんでるだけじゃない。」
「返す言葉もないな。」
「フンッ!もういいわ。いい?勝手に私の影を使わないで!お兄ちゃんはお兄ちゃんの武器があるでしょ?」
「ああ。」
そのまま男を置き去りに趣味の悪い部屋から飛び出す。
ドレスをひるがえし、目的の情報を確保するために。
「お兄ちゃんだけ、面白いようにはさせないから。」
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