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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
35/166

鍋少女

修道服の少女の描写を書き足しました。

 時間は少し遡る。 


 朝、金物屋に不釣り合いな二人が睨み合っていた。


 「これ、ください。」


 「それは売りもんじゃねぇ。」

 

 言葉少なに睨み合うドワーフと修道服の少女。


 白い修道服はまるで一切の穢れを取り払ったかのような純白であるのに対し、それを着ている少女は身の丈は140cm程度。


 ベールの奥に見える表情は無表情。


 特徴的な三白眼はトロンと眠たげだ。


 片言の応酬は、もう何度も繰り返された。

 そのやりとりはまるでコントのようだが、その言葉に笑いの要素は感じられない。


 そんな構図の冷戦に終止符を打つべく。


 「かえれ。今日はもう店じまいだ。」


 「まだ昼間。」


 「昼間でも閉める時は閉める。」


 『バッチッパチ』火花が散りそうな視線のぶつかり合い。


 お互いの目の高さが同じくらいというのもある。


 まるで長年のライバルと出くわしたかのように。


 「これ…。」


 「売らん。」



 睨み合う二人は今にもつかみ合いを始めそうだ。



 「じぃちゃん!きたぞ!いらっしゃいませは!?」


 「「…。」」


 「コトか。」


 修道服を着た少女は、バレない程度に目をむいた。


 《このこ…》


 「めずらしいな!おきゃくさんか。いらっしゃいませ。きょうはこのなべがやすくなってます。」


 「…。」


 『ニカッ』


 コトの破壊力抜群の笑顔と場の雰囲気を考えない発言のせいでまるでバケツの水をぶっかけられた焚き火のようにブスブスと気まずい空気が消炎していく。


 「あの時の子…?」


 「ん?」


 「頭悪い…筋肉。からまれてた…。」


 「よくわかんねぇけど!なべかえ!」


 コトは手にとった鍋を修道服を着た少女に押し付ける。


 「ぶっぶははは。」


 我慢しきれずおもわず吹き出したドワーフは。


 「その鍋をやるから今日は帰れ。店じまいだ。」


 「…。」


 渡された鍋を胸に抱いたまま、コトを見つめる。


 「わかった。またくる。」


 「来ても売らんぞ。」


 別に関係ないとでも言うかのように、スッと何事もなかったように立ち去っていく。

 

 人の往来を鍋を抱えて歩く修道服の少女。


 一部のマニアに密かに支持され語り継がれていく。


 


読んで頂いてありがとうございます。

感想や評価、ブクマして頂くとより多くの方に読んで頂けるきっかけになり、筆者のモチベーション維持に役立ちます。

宜しくお願い致します。


つぎはam8:00になります

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