完成
「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!」
「ちょっと煙が…ゲホッ!」
「何してるんですか!」
隣の家から血相を変えた美人が二人飛び出してきた。
「ああ、煙行っちゃったか。すいません。すぐ収まりますんで。」
「収まりますんでって…。あれ?ドワーフ?」
姉妹は俺の後ろにいる人物に気づく。
おやっさんは相変わらずムスッとした顔で姉妹ではなくスモークボックスの様子を凝視し続ける。
「一体何をしてるの?」
漏れていた煙は多少収まったが未だ、口のあたりを手で抑えながら物珍しそうに煙の元を見る。
「新作料理の試作です。」
「「これがぁぁ?」」
あ、ハモった。
そこから暫く燻製の説明をするがあまり腑に落ちない様子で
「とにかく煙は気をつけて!」
そう言い残し、二人は消えた。
「怒らせちゃったかな?」
「あのくらいで怒るなど最近の若い女は。」
おやっさんは別のことで文句を言っている。
燻製というのは、燻し乾かすの繰り返しだ。
通常最短三日ほどはかかる。
さすがに明日もやったらぶち切れられるだろうなぁ。
どこかいいところはないかとおやっさんに相談すると
「工場でやればいい。」
と言われた。
あんた、それでいいのか。
もはや、酒のつまみ一直線。
後にテオに聞いた所によると、この数日仕事という仕事に手を付けてないんだそうだ。
――――――
「出来たな。」
「これが燻製か…。」
飴色に輝く鶏肉は、燻製を食べたことがない人でもかぶりつきたくなるような色で、そこから香る香ばしいスモークの香りは、胃液を直接刺激するかのようだ。
結局、その後大漁に購入した鶏肉をスモークするためにボックスを十個追加。
約三日後テーブルに山積み出来るほどの鶏肉のスモークが出来上がった。
「一晩冷暗所に寝かせましょう。」
そう言うとおやっさんとテオは絶望的な表情を浮かべた。
それはそうか、道具制作に一日、スモークに三日。計四日待って出来上がったと思った瞬間お預けだもんな。
だが、ここでおやっさんの酒への深い愛情と魂を見ることになる。
「…待とう。」
「まじですか!師匠!もうコレ食べれるんですよね?十分美味そうじゃないですか!
そうだ!まず一つずつ食べましょう。残りを寝かせればいいじゃないですか!?」
「…いや…小僧がこういっているんだ。ワシは待つ。」
そのまま老兵が死地へと向かうような雰囲気で哀愁を背中に背負い工場の奥へと消えていった。
「肉は小僧の家へ運んでおけ。」
「此処に置いとけば、バカが全部食っちまいそうだからな。」
テオをひと睨み。
すテオは一瞬『ビクリ』と震えたが
「師匠、嫌だなそんなわけないじゃないですか。」
いや、テオ…よだれよだれ。
荷馬車まで使い俺の家へ肉を運ぶと、まだ後ろ髪を引かれるのか恨めしい顔でテオが暗闇に消えていった。
なにか言葉にならない奇声をあげていた気がしたが…。
おやすみ、テオ。
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つぎはpm19:00予定




