旅立ち
ショートですが、宜しく御願い致します。
「おい、行くぞ。」
「ん。」
俺、いや…俺達は、でかい背の高い石の前で跪き手を合わせた後、村の中央に立ち止まっている荷ロバ車へと徒歩を進めた。
「よし、こい。」
俺は、目の前のガキの両脇に手を入れ軽く持ち上げると、荷車の荷物の上へと乗せる。
荷ロバ車は、少しデカメのリヤカーにロバを繋げただけのものだ。
車輪部分は木で、ゴムのクッション性もサスペンションもあったもんじゃない。
乗り心地は最悪だろうが、それでもコイツは喜んでいるようだった。
「お前はそこで静かにしてろ。」
「なんかギッシギシいうな!」
「おう、だから静かにしてろ…暴れるな。」
『ガシッ』
「あわわわ」
荷車の上で飛び跳ねるガキの頭をグリグリし、先頭のロバを引きながら歩き始める。
「つか、コイツ振り向くといなくなってそうで怖…」
「…。」
「もう、いねぇ…。」
急いで荷車の後方へ行くと、数メートル後方にしゃがんでいるガキを見つけた。
振り落としちまったか?とも考えたが、それ程激しく揺らした覚えもない。
『ダッダッダッ…。』
とガキが何かを手に走り寄ってきた。
「父ちゃん、カブトム…。」
『ドスッ。』
振り上げた手刀が、ガキの脳天に突き刺さる、所謂脳天唐竹割り。
「あう」
「お前はいちいちそんなもんに反応すんな。」
「大体、いつから俺はお前の父ちゃんになったんだ。」
この後このパターンの行動と会話が永遠繰り返されることになるとは、俺もこの時思ってもいなかった…。