おとなり
そうか、そういえば出来上がっていたな…。
「隣に越してきました。アヤセと言います。姉と二人で住むことになりました。」
隣の家。
あまり来客などないうちの扉がノックされ玄関ドアを開けると。
そこには、顎のラインで髪を切りそろえた活発そうな少女が立っていた。
年の頃なら18歳位だろうか。
はっきりとシャキシャキ話す感じの元気少女は、初見で美少女マークをつけてもいいくらいの整った顔だった。
俺は「よろしく。」と挨拶をするとコトを紹介し自分の子供であることを告げる。
最初はびっくりしていた様子だったが、すぐに。
「かわいいお子さんですね。よろしくコトちゃん。」
そう言ってくれた。頭の回転も早い子らしい。
そのまま軽い挨拶を済ますと扉を締める。
まだ眠い。
昨日、おやっさんと飲み過ぎたせいだろうか…。
俺はもう少し惰眠をむさぼる事にする。
まだまだ今日は始まったばかりだ。
寝れるときに寝よう。
人は寝ないと生きて行けないのだから。
『ZZzz…。』
――――――
アヤセはお隣への挨拶を済まし自宅へと帰宅すると
「お姉ちゃん。行ってきたよー。」
「ごくろうさま~。」
「これ運んどいて、あとこれも。」
「妹使いが荒いな…。もう。」
ため息混じりにつぶやくアヤセに
「お隣さんどうだったぁ~?
そんなことはお構いなしと、自分の聞きたいことだけをアピールし始める。
これが長女の性格なのだろう。
「すごいイケメンだったよ。」
「まじっすか?」
「まじで。」
「ふ~ん。でもまぁアヤセの男を見る目は当てにならんしなぁ。」
「え~。」
「だって初恋のあの…。」
「あああああああああああ、言わないで!!お姉ちゃん!!それは黒の歴史。」
頭を抱え身悶える妹に、姉はやれやれといった表情を浮かべる。
「……。それでさ、アヤセ。」
「ん?なによ。サラ姉。」
…。
「そこにいるちまっこいのは誰?」
「え?」
「ええ?」
「えええええええええ。」
――――――
「申し訳ない。うちのコトが。」
「いえ、コトちゃんかわいいし、うちは楽しかったので。」
「えっと…。」
「アヤセの姉のサラサです。」
金色のロングヘア、細い眉に切れ長の目はクールビューティーとでもいうのだろうか…。
元の世界なら間違いなくスーパーモデル級の美女が扉の前にコトを抱いて立っていた。
妹のレファちゃんとは毛色の違う美人だな。
まぁ、この年で子持ちの俺にはノーチャンス。
運命を怨めど、コトは憎まず。
コトを受け取った時にフワッと久しぶりに甘い女性特有の香りがした。
何年ぶりだろうか。
そんな感情をコントロールしつつ、冷静な表情でコトを抱き、そのまま扉は閉められた。
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