芋
「「うまい!」」
干物を焼いた匂いには渋い顔をしていた二人だったが、干物を一口頬張ると渋い顔が反転びっくりした表情に、そして笑顔へと変わる。
「それにこの酒はなんだ。」
俺が彼らのコップに注いだのは芋焼酎だ。
芋焼酎といっても素人の手で作ったものであり、本来の香りや味には程遠い出来だ。
しかし、この世界にはあまり酒の種類が多くはない。
ワイン、炭酸抜きのビールのようなもの、ウィスキーの薄いもの。
あと甘めの果実を使ったリキュール類もあるらしいが庶民が手を出せる価格ではないらしい。
もとより果実自体が高級品なのだ。
コトが以前、筋肉にキレられた件もそこに付随しているといっていい。
細かな醸造方法は、省くが焼酎のいいところはウィスキーやブランデー、ワインのように長期熟成しなくても美味しく飲めるというところにある。
何年ものというのもあるにはあるが、できたら即のんでもうまいのが焼酎の特徴だ。
「うまい、うまい。」
と二人は職と酒が進みテオは一時間足らずで眠りについた。
おやっさんはさすがドワーフとでも言うのだろうか、ペースは落としても永遠に飲み続けられるといった感じである。
「いい酒だ。」
そう言いながら少し頬を赤らめ三枚目の魚をつつきつつ、もう数十杯目の水割りを楽しんでいた。
「世話になったな。」
「泊まっていけば…。」
「いや、迷惑をかけるでな。」
肩に担いだテオを横目におやっさんはほろ酔い状態で工場へと帰っていった。
しっかり、おみやげの大漁の干物と芋焼酎を持って。




