テオ
「干物?これがか。」
「はい。」
「聞いたことはある。魚は、はじめてだが。」
ああ、やっぱり乾物はあるんだ。やぱこういう世界では保存食は必須だしな。
「おみやげです。酒に合いますよ。」
おやっさんと若い店員は物珍しそうに魚の干物を眺めている。
「よかったら今夜うちにきませんか?」
『ピクリ』
「久しぶりにお風呂も…。」
『ガシッ』
「シロさん!それは本当に!」
「え?え?」
両肩を捕まれブルンブルンとふられる俺。
若い店員、実は今日まで名前すら知らなかったが。
「いやだなぁ、テオですよ。いいかげん覚えて下さい。」
いや、初耳だが。
彼は風呂の話をおやっさんから聞き、風呂に入る機会を心待ちにしていたのだとか。
そんな興奮気味の彼をなだめつつ、今夜二人をうちへ招待することになった。
コトはよく「じぃちゃん、またきてくれるといいな。」とじぃちゃん子っぷりを発揮しているので大喜びだろう。
テオのことはよくわからない。
俺もよく知らない。
今後も興味ない。
すまんな…。テオ。
――――――
「すごいっすねぇ。これは最高っす。お風呂サイコー!!」
叫び声がこだますると同時に
「黙らんかぁっ!!バカモノ!!」
おやっさんの雷が落ちる。
「風呂とは優雅に【静】を楽しむものである。」
これがおやっさんの風呂の楽しみ方だ。
まぁ、風呂の楽しみ方なんて人添えぞれだと思うのだが。
この二人はコレが通常営業なのだろう。
テオは上機嫌のまま特に気にした様子はなく怒られ続けている。
「だいたい人間嫌いのおやっさんがこんなになつくなんて天変地異でも起こりそうな勢いですよ。」
と言っていたテオはその直後、星の彼方まで打ち上げられるかのようにおやっさんのアッパーカットで夜空を舞った。
読んで頂いてありがとうございます。
次は15~16時頃




