ツンデレ2
そのまま打ちひしがれた表情のまま、おやっさんのトコに顔を出すと
「魚?そんなもん釣りに行って食えばいいだろ。」
oh my god。
神様ココにいた。
そうだ。別に家で食べることに拘る必要はない。
「よし、行くぞ!コト!」
「どこにいく…。」
未だ状況を把握出来てはいないコトはまだ目の下にくまが出来たような疲れた表情でうなだれている。
「やるきがでない~。」
お前はその年でひきこもりニート予備軍か。
「釣りだ。」
「つり…つってどうする…もうコトはぜつぼうしかかんじない。」
ダメだ。コイツは闇に支配されている。
「釣ってその場で食うんだ。山で食ってたろ?あれだ。」
「…山…つる?つる??やくのか!!!」
「そうだ。山かは知らんが…。」
「それなら南門から出て一日速足馬に乗ったところに渓谷がある。」
そうおやっさんに教えてもらった俺達は、翌日準備を整え速馬車で言われた渓谷へと向かった。
――――――
さわやかな風が吹き抜ける。
それ程大きな渓谷ではないが、心地よい滝の音が自然息吹を感じさせる。
「ほら、エサつけたぞ。」
「でっかいのつるぞ!」
周囲には俺達以外誰もおらず街の喧騒とは程遠い空間にリラックスしたまま本来の目的である釣りを開始した。
元々釣り竿は最初の村でコトと村民が使っていたものだ。
俺は釣り竿を垂らしながら街を出るときのことを思い出していた。
「コトいくぞ。」
「わかった。とうちゃんはやくしろ。」
「いや、お前のトイレ待ちだ。お前の。」
借り物の早馬車にコトを乗せ、街の出口まで馬を引いて歩いて行く。
朝焼けを背に街のゲートが見えてきた頃。
「ん?あれは…。」
門の近くに一人のドワーフが立っていた。
「おやっさん?」
「なんだ?じぃちゃんか!」
コトが馬車から身を乗り出す。
「持っていけ。」
そう言われて差し出されたのは鉄の大きめサイズの水筒と…。
これは剣?
「昨日いい豆が入ってな。特別だ。」
「ありがとうございます。この剣は?」
「わしの友人が使っていたものだ。」
「いいんですか?」
「使え。」
それだけを言うと、コトになにやらひと声かけて朝靄の街に消えていった。
渡された剣は鞘に収められたまま俺の隣に置いてある。
武器のことはよくわからない。
ただ、この鞘の装飾は…。
彫金技術がスゴイ。
それにこれは宝石じゃないのか?イミテーション?
剣の柄にはめ込まれた大きな石は、真紅のごとく燃え上がるような赤。
竿を置き、鞘から少しだけ剣を引き抜いてみる。
怖い。
そう素直に思えるほどに、美しく今まで見たどの武器よりも血の香りがした気がした。
最近はめっきり寒くなってきました。
みなさんもお体にはお気をつけて。
おやすみなさい。良い夢を。




