表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
2/166

遭遇

続けて宜しく御願い致します。

 俺は今、村にいる。

 正確には村だったであろう場所にだ。


 あれから随分と川の上流へと登り、やっと見つけた村には、

 ……誰もいなかった。


 廃村という雰囲気はみじんもない。


 表現するならば、そこで生活していた人間だけがいなくなった感じだろうか。


 別に火種などは残ってはいなかったが、幾つか点在するテントやログハウス風の家にはシーツ類がかけられたままのベットや、台所だと思わしき場所に置かれた鍋や木で出来た食器類で生活感は見て取れた。


 「人間は存在するん…だよな?」


 誰に問うわけでもなく自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。


 疑問はいくつかある。


 いい方へ考えればただの廃村、別の村へと村人全員で移住したといったところだろうか。


 ただこの場合問題点は、家々にはかなりの生活必需品や服、食料、お金と思われる硬貨などが残されており、移住と見るには不自然すぎる点が多い。


 村に死体や血痕がない事から争い事が起きた可能性は低い。


 伝染病のたぐいも同じく死体等がないことからまずないだろう。

 

 消去法でいくなら、住民全員が忽然と消えた。

 これが一番しっくりいく回答かもしれない。


 

 

 「もし、住民が戻ってきた時は平謝りで現状を説明するしかない。」

 そう自分に言い聞かせ、ひとつの家を間借りすることにした。


 家にはベッド、テーブルに椅子が二つ。


 部屋は仕切られておらずこぢんまりとしたスペースにそれらが置かれていた。


 硬く黒いパンのようなものはこれが原型なのか、時間経過でこうなったかは判断しづらいが、まだ腐っていない食料があることからもこの家の住民が家を開けてそう日数はたっていないと推測できる。


 人のいない不自然さ以外にも、不自然な部分に気づいた。


 文字がない。


 普段生活していた自分の周りあふれていた文字、コンビニの袋や服マグカップや食品にさえ溢れていた文字がない。


 通常、気にすることもなかった点だけに違和感がすごい。


 シーツにもタグの類は発見できなかった。

 

 「ほぼ間違いなく、俺の知ってる世界じゃないな。」


 そういう結論にたどり着くのは結構早かった。

 それは家の裏にある物置のような場所、そこに丁寧に保管されていたいくつかの武器、防具類がそう物語る。


 使い古された剣や木弓や木盾。

 

 さすがに現代の地球上でこれらが活躍できる環境はほぼないだろう。


 「ガサッ」


 背後で物音がした。


 心臓が口から飛び出る程びっくりするとはこのことだろうか。


 すぐに背後を見遣るがすでに気配はなく。


 「ウサギ…か?」


 急ぎ物置を飛び出しあたりを見渡すがそれらしき影は見当たらない。


 その時…。


 『ドンッ!』


 っと下半身腰の辺りに衝撃が走り、激しく尻餅をつく形で後方へと身体は投げ出さられ仰向けに倒される。

 

 その時俺の記憶はあの時のようにブラックアウトしていく…。


 最後に記憶した光景は俺の腹の上に乗る青い髪のガキの泣き顔だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ