久しぶりとはじめての
『カラカラカラ。』
同じ桧で作られた引き戸が良い音でサッシを滑っていく。
『バッ!』
腰に巻かれていたタオルがひらりと舞う。
「とうちゃん!これがあの!」
『バッ!!』
肩に担いだタオルをコールされたプロレスラーのように振り投げる。
「そうだ!コト!これがあの!」
二人の視線には、夢にまで見た光景。
長方形の木箱にたつ湯けむりは、なにものにも代え難いリラクゼーション効果を生み出している。
そしてなんとも言えないこの香り…。
「もう我慢できん!」
「できん!!」
コトとシロの二人は同時に駆け出した。
『『ダッダッダッ』』
「「とうっ!!」」
『『ざっぱぁああああっ』』
――――――
「ふ~。素晴らしい湯だった。」
『ゴクッゴクッゴクッ』
「ゆだった。」
『ゴクッゴクッ』
風呂から上がった二人は、恍惚の表情でカップ片手に自作のコーヒー牛乳を飲む。
もちろん二人共、並んで腰に手を当てている。
言うなれば総桧造り。元の世界で作れば風呂桶だけで80万くらいだろうか。
桶、スノコ、壁から挙句扉まで桧となればその倍はくだらない。
それがここでは十分の一以下で手に入れることができる。
「素晴らしい。」
風呂あがり、居間の片付けが終了し、すぐに帰ろうとするおやっさんを無理やりお風呂に詰め込み。
俺は、懐かしい湯上がりのぽかぽかした感覚を楽しんでいた。
しばらくして、風呂場の方からタオルを頭からかけたおやっさんが現れた。
テーブルに置かれていた、コーヒーカップを手渡すと。
おやっさんはそれを受け取り。
「あんなものがあったとはな。俺は今までどれだけの時間を無駄にしてきたんだ。」
気に入ってくれたみたいだ。
「風呂は一日に何度入ってもいいんです。十分ほど休憩して又入るなんて楽しみ方をする人もいますよ。」
「わかる。」
ただ一言そういうと少しぬるくなったカラフェを煽る。
なんて素晴らしい一日だろう。
『ZZzz…。』
ああ、寝ちゃったか。
居間で大の字になって寝るコトを見つめながら、おやっさんと俺は二杯目の今度は熱いカラフェを淹れた。
お風呂はいいですね~
忙しい時は面倒だし、一人暮らしだと湯船を溜めることもあまりありませんが。
次は0時更新予定です。
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