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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
17/166

久しぶりとはじめての

 『カラカラカラ。』


 同じ桧で作られた引き戸が良い音でサッシを滑っていく。


 『バッ!』


 腰に巻かれていたタオルがひらりと舞う。


 「とうちゃん!これがあの!」


 『バッ!!』

 

 肩に担いだタオルをコールされたプロレスラーのように振り投げる。 

 

 「そうだ!コト!これがあの!」


 二人の視線には、夢にまで見た光景。

 長方形の木箱にたつ湯けむりは、なにものにも代え難いリラクゼーション効果を生み出している。

 

 そしてなんとも言えないこの香り…。


 「もう我慢できん!」

 「できん!!」


 コトとシロの二人は同時に駆け出した。 


 『『ダッダッダッ』』

 


 「「とうっ!!」」



 『『ざっぱぁああああっ』』


 ――――――


 「ふ~。素晴らしい湯だった。」


 『ゴクッゴクッゴクッ』


 「ゆだった。」


 『ゴクッゴクッ』


 風呂から上がった二人は、恍惚の表情でカップ片手に自作のコーヒー牛乳を飲む。


 もちろん二人共、並んで腰に手を当てている。


 

 言うなれば総桧造り。元の世界で作れば風呂桶だけで80万くらいだろうか。

 桶、スノコ、壁から挙句扉まで桧となればその倍はくだらない。


 それがここでは十分の一以下で手に入れることができる。


 「素晴らしい。」


 風呂あがり、居間の片付けが終了し、すぐに帰ろうとするおやっさんを無理やりお風呂に詰め込み。


 俺は、懐かしい湯上がりのぽかぽかした感覚を楽しんでいた。


 しばらくして、風呂場の方からタオルを頭からかけたおやっさんが現れた。


 テーブルに置かれていた、コーヒーカップを手渡すと。

 

 おやっさんはそれを受け取り。


 「あんなものがあったとはな。俺は今までどれだけの時間を無駄にしてきたんだ。」


 気に入ってくれたみたいだ。


 「風呂は一日に何度入ってもいいんです。十分ほど休憩して又入るなんて楽しみ方をする人もいますよ。」


 「わかる。」


 ただ一言そういうと少しぬるくなったカラフェを煽る。


 

 なんて素晴らしい一日だろう。


 『ZZzz…。』


 ああ、寝ちゃったか。


 居間で大の字になって寝るコトを見つめながら、おやっさんと俺は二杯目の今度は熱いカラフェを淹れた。



お風呂はいいですね~

忙しい時は面倒だし、一人暮らしだと湯船を溜めることもあまりありませんが。


次は0時更新予定です。


読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読者も増えてきて大変嬉しいです。

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