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ことしろ  作者: 無色瞳明
第二章 学園都市編
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天瘡 城

 

 この世界はおもしろい。


 天瘡アマクサ シロは心からそう思う。


 天瘡 城にとっての異世界が、たまらなくおもしろい。


 戦争や争い事は堪えないが、よく考えて見ればそれは元いた世界も同じことだ。


 世界のどこかで、必ず銃声が聞こえていた…はずだ。


 それに、人は争うことが好きだといわざろうえない。


 戦争・抗争・ケンカ・犯罪etc…。


 周囲が平和な安全地帯に生まれたとしても、人はゲームや遊びで人と争い続ける。


 天瘡 城が産まれた日本は、平和な国だ。


 だが、天瘡 城は毎日のようにネットを通じ仮想世界で人と争い続けた。


 別に何がそこに生まれるわけでもなく、争っていた。競っていた。


 誰に押し付けられるわけでもなく、自分で選び、自分で金を払い戦っていた。


 今考えれば、バカみたいな話だと天瘡 城は思う。


 だがそれも、平和だからこその娯楽だったのだと認識してはいる。


 だからこそ、人間は純粋な戦闘民族だと天瘡 城は思う。


 リアルで人を殴ったことなど一度もないし、殴りたいほどの相手も居なかった。


 それでも人間は、純粋な戦闘民族だと天瘡 城は思う。



 この都市に来て一年以上、この世界にきて一年半以上が経過した。


 特にこの都市い来てからの一年は、激動の一年だったといえる。


 何度か死にかけもしたが、それでも天瘡 城は元の世界に帰りたいとは思わない。


 理由は特にない。


 天瘡 城にとってのリアリティがこの異世界にはあるから。

  


 

  


 この都市の広さに対し、学園地区の面積は、さほど広くない。


 ルクレツィア王立学園に通うもの、勤めるものの生活の基盤は、学園通りと呼ばれるメインストリートがほぼその全てを担っている。


 そのメインストリート中央の一等地で、三十名程の作業員が急ピッチで作業を進めている。


 ほぼその外観は完成に近く、その異様な外観から何が出来るのかと開店前から人の目を引いていた。


 この世界にショーウィンドウなど存在しない。


 言わずもがな、純度の高い透明なガラスが貴重である事からそれは伺える。


 グラス・コップ・ビン類は全てが何かの色に染まっている。


 これはガラスの中の不純物を隠すためでもあり、安く制作し一般に普及させるには制作の都合上そうなるのは仕方ないこといえよう。


 鉄で出来た重みのあるカードのようなものを手渡されたシロは、初めて学園地区へと足を踏み入れる。


 重厚な門の奥には、自分の住んでいる商業地区よりも多くの緑に目を囚われる。


 商業地区を都会と称するならば、学園地区は避暑地と言った所だろうか。


 なにかゆっくりとした時間の流れを感じる。そんな空気感が漂っていた。


 まだ学園は休学期間らしいので余計にそう思わせるのかもしれない。


 これで学園が始まれば少しは騒がしくなるのかもなとシロは微笑う。


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