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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
16/166


 思ったより早く出来たな。


 鉋掛け(かんながけ)は俺の仕事だ。


 本体部分の表面をカンナを使って削り平らにする。カンナが動くたび


 『シュッシュッ』という心地良い音と桧のいい香りが広がる。


 枠のサイズと的確に合わせる寸法で底板が取り付けられ。


 仕上げに、使い慣れた木槌でおやっさんが木の噛合を確かめる。


 木桶などは作ったことがあるからこそ、俺の雑な説明でもすぐ風呂桶というものを理解してくれた。


 しかし、ドワーフはモノ作りの種族とは聞いていたがその才能は凄まじいものだ。

 

 もしかしたら、おやっさんが特別なのかとも思ったが


 「俺は中くらいだ。」


 とその思考は一掃された。もちろん謙遜も入っているだろうが、実際ドワーフの国に帰れば大したことはないと胸を張られてしまうとなんとも職人の世界の深さに感服する。


 

 カンナをかけ滑らかな手触りにしたカマチ(手すり)部分を釘で打ち込む。


 平均的に打ち込まないと手すり部分が斜めになり修正が難しくなる。


 下木を置きカマチ部分を傷つけないように『ドンドン!ドンドン!』と細かなリズムで重低音が響く。


 風呂桶の周囲を回るようにして打ち付けた後、スッとカマチ部分に手を滑らせる。


 


 「「完成だ(出来た)」」




 「我ながら見事だ。」


 ウンウンと額の汗を吹きながら満足そうにおやっさんは頷いた。


 

 

 

 180x120程の少し大きめの風呂桶は大人三~四人がゆったり入れるサイズだ。


 元々この家は民家ではなく食堂だったらしく、キッチンが広めにとってあった為その水場部分をうまく改築した。


 この世界の風呂場は基本屋外にある。トイレも同様だ。

 旅の途中何度も経験したが、簡易のポンプ装置が屋外に取り付けられておりテント場のシートで覆い、そこで水を浴びる形だ。

 冬場になればお湯のサービスなどもあるが基本水浴びである。

 

 日本人のアイデンティティとしては我慢ならないこの世界への不満であった。

 持ち家を持ったら、必ずやってやると。心に誓ったあの日を俺は忘れない。


 借家だけど…。



ショートですが。


お風呂作りも無事終わりました。


次は19時予定です。書き上がれば…。

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