学園
「学園地区を知っているか?」
先ほどとは違う落ち着いたトーンで言葉を紡ぐ中将。
「ガクエンって、あの学園か?」
「およそ違いない。」
「この街にそんな地区あったのか…。」
シロはこの世界に学園・学校というシステムが存在している事に驚く。
確かにラノベやアニメではありがちな設定ではあるが、このリアリティあふれる異世界に不似合いなシステムが存在していることがまずシロの思考にはなかった。
しかし、よく考えてみるとこの世界は、少なからず自分が元いた世界の影響を受けているとシロは考えていた。
それが、自分以外の異世界人によるものなのかは不明だが。
もしくは、全く別の要素として誰かの意図として、盛り込まれているのか。
基本的に、自分の頭で考えても同しようもないことはシロは考えないことにしている。
その為、この話に結論付けることも、調査なども全くしていない。
シロは毎日が楽しければそれでいいのだ。
別に元の世界に戻りたいわけでも、会いたい人が居るわけでもない。
だからこそ考えることを放棄できると言えよう。
「セバスティアン。」
アグエロの声にセバスティアンとメイド達が同時に動き出し、素早くテーブルの上のものを片付けると、大きめの地図を広げる。
「へぇ、この都市の地図か。」
店の名前、家主までは記入されてはいないが、ある程度わかりやすく表記されている。
城を頂点に多少歪ではあるが変形の円グラフのように街が広がっている。
大きく区分されているのは三つ。
貴族街地区。
商業地区。
学園地区。
黒く塗りつぶされている場所もあるがこれは、まだ未開発な場所なのだと聞いたことがあった為、シロは確認を後回しにする。
「学園地区…。ここか…。」
「そうだ。城を挟んで…ココ、丁度…商業地区とは反対側だ。」
アグエロが指し示したのは商業地区の左に位置する、広さ的には商業地区の三分の一程度のエリア。
「ふ~ん。たしかにこっち側は足を運んだことがなかったな。」
「学園はわかるか?」
「学校のことだろ?」
「ガッコウ?」
……ああ、この世界特有の名称アルアルか。
「ガキがお勉強をするところだろ?」
「フッ、そうだ。」
ようするに、学校として認識している名称は、学園として広まっているわけか。
「その人質の輸送先が…ここだと?」
シロは地図上の学園地区を指さす。




