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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
15/166

トントントン


 『ガバッ』


 「朝だ!」


 『だだだっ』


 『トントントントン…。トントントン。』


 「ふあぁ~。何やってんだ…。あいつ。」


 朝から元気なやつだ。

 むっくりと上半身だけ起き上がり、辺りを見回すが


 「いるわけもないか。」


 『トントントントン…。』


 木槌の音?


 ああ、隣か。そういえば一昨日辺りから、なにか搬入していたな。


 

 俺が借りているこの家の両隣は空き地だ。


 この世界がどの程度の広さなのか知らないが。


 この国の田舎と呼ばれる地方地域は、家、田畑又は農場、家そんな風にかなり広々と土地を使っていたし。隣との感覚がかなり広かった。


 しかし、第二の都市と呼ばれるこの城壁都市は、城壁に囲まれた限られたスペースで在るため、概ね元の世界の通常の都会と同じような間隔で建物と建物が密集している。

 

 俺の家がある周辺はまだ土地に余裕があるが、メイン通りなどは店と店の間隔が殆ど無いくらいだ。


 「隣にコンビニができるといいなぁ。」


 ボーっとそんなことを考えてしまうのはまだ元の世界の自堕落な生活が抜けきってない証拠だろうか。


 

 「とうちゃん。今日はでっかいのが来るんだろ!」


 「は?……ああ。アレのことか。そうだな今日だったか。」


 昨日の事件ですっかり忘れていた。


 ドワーフのおやっさんに注文していたもう一つの特注品が今日やって来る。


 正確には今日搬入されここで組み立てなければならないので本日中に完成できるかは定かではない。

 もしかしたら、数日を要するかも知れない。


 なにしろこの世界にはないもののひとつだしな。


 

 ――――――



 程なくして居間に大量の木材が運び込まれる。


 「本当に突拍子もないものを思いつく小僧だな。」


 「褒め言葉だと思っておきますよ。」


 「フンッ」


 元々はコレに必要な道具の制作を依頼しただけだった。


 カンナや特性の釘。結局は何に使うのか興味をもったおやっさんが色々材料調達までしてくれたわけだ。


 材料になる木材は比較的安価で手に入れることが出来た。


 何より素人が組み立てなければならなかったものをモノ作りのプロがやってくれるだけでも感謝だ。


 「木材は久しぶりだ。」


 と、やる気充分な感じが漂ってくる。


 「水を張るなら精密さが必要だ。」


 そう、この木材はヒノキ


 俺達がこれから作ろうとしているのは桧風呂だ。


 「じぃちゃん!おはよう!今日よろしくな!」


 「おう。」


 「……。」


 なんか仲良くなってねぇか?


 

 

 『トントントントントン。』


 お隣に負けない木を打ち付ける音が鳴り響く。

午前中に一本、午後に一本程書ければなと思っています。


読んで頂いてありがとうございます。

ブクマ、評価して頂けると今後の励みになります。

宜しくお願い致します。

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