裸のなんとか
「……。」
「…アグエロ様。こちら、お持ちしました。」
「おう、じゃぁ皆に注いでくれ。」
目下の者に毒を吐かれても、不動を保つその姿は父に似たのだろうと、アルフィは混沌と感心に揺れた。
順々にグラスに注がれていくお酒らしき水は、無色透明、蝋燭の光の所為か多少琥珀色に輝いて見える。
その場のカオスにをスルーするかのように、シロのフードの中からゴソゴソと、白とピンクのモフモフが現れ、肩を伝ってテーブルに降り立つ。
『「「「!?」」」』
ざわっとする空気をよそに、飛び出してきたモフモフは、ピンと伸ばした耳を前足でひと掻きすると、その手をそのままグラスの中の液体へとちょこんと漬ける。
その姿をあっけにとられたまま、ただ呆然と見つめる外野はさておき、シロはその様子を微動だにせずただ眺めていた。
ペロペロと肉球を舐める二匹。『フンッ』とくしゃみのよな鼻息をした後、ノソノソとシロのパーカーのフードに入っていった。
その後、俺はグラスを手に取り、少し眺めた後少しだけ口をつけた。
「麦…か。」
口の中に広がる独特の甘みは芋とは違い癖がなく飲みやすい。
シロはグラスを手にとったまま二口目、口をつけようとした時に少しイラッとしたような表情を見せた。
グラスを少し口前から離し、まるで遠くにいる人間に話しかけるかのようにトーンを上げた声で。
「あ~、それから隣の部屋で剣とか弓とか構えてるバカども。」
『ザワッ』
「護衛だろうと思うが、一々そう殺気立ってたら低レベルの冒険者でも気がつくぞ。それに、その程度の人数でどうにか出来るとか思っているのか?これは忠告じゃない、警告だ。…せっかくの酒がまずくなるだろ?」
シロは再びアグエロとその隣に座る筋肉ハゲオヤジを睨みつけた。
「中々に、元気なクソガキだな。」
やっと口を開いた筋肉ハゲオヤジに、シロは刮目すらせずに逆に何かを値踏みするような態度を取り続ける。
「……。」
「我を誰か知っておるのか?」
「ヘンタイの仲間だろ?」
「我はここにおるアグエロの父であるぞ。」
乳…いや、父親って事は、コイツがこの国の…。そうシロが思考してる間に裸のオヤジは立ち上がり大声で名乗りを上げる。
「我は、第二十九代ルクレツィア王国国王!ファンバッハ・マインツヘル・ルクレツィアである!!」




