新たなる
「ここまでくると、シロ君の有名人引き寄せパワーは本物だね。」
少し前アグエロとそんな話をしていた気がするなと思いながら、リオンはグラスに注がれた琥珀色のエールに似た飲み物を口にする。
もう二杯目のビールだが、口の中に含む度、弾けるような刺激が舌先を突き刺す。
そのまま喉へと流しこむと、まるで喉が洗い流されていくような爽快感に支配されていく。
一口で酒飲みの誰もが魅了される苦味と刺激、こんな飲み物は飲んだことがない、いや聞いたこともない。
多分、この世界のどこにもこんな飲み物は、存在しないんじゃないのかと思えるほど画期的な飲み物である。
「ドヴァーリンさんやアグエロがシロ君を特別視するの理由がわかるよ。」
ティファの持っていたハサミという刃物も、ナイフを二枚重ねて挟んできるという、その発想がすごい。
この前飲んだ芋焼酎も、鼻に抜ける独特の香りがたまらなく癖になる、濃い酒なのにフルーティという今までなかった味だった。
肉やチーズを使った新しい保存食もそうだ。今までは、ただ塩漬けにした肉を乾燥させた干し肉しかなかったが、狩りなどで何日も遠出する時の携帯食は劇的に変化した。
まだ蒼炎とマッスルブラザーズしか知らないが、いずれ世界中に広まるだろう。
そして、誰にも媚びず従わず、生まれたその地を離れることがないという聖獣。
伝説とまで呼ばれ、最近では表舞台から姿を消していた歴戦の勇者たちまでもが集う。
アグエロが前にいっていた、人を惹きつける能力…とはこういう事を言うのかもしれない。
過去戦乱の中、数多の英雄や伝説が生まれそして歴史の中へと消えていった。
あるものは、剣の才でその地位を手にし。
あるものは、魔法の才でその地位を手にし。
あるものは、優れた才覚によって軍を導き。
そのどれもが、争いによってその力を堅持してきた。
僕達は今、新しい世代の伝説が生まれる瞬間を見ているのかもしれない。
小さな頃から、その類まれなる武の才によって、伝説や英雄と並べ比べられていたリオンだからこそ、そう素直に認められたのだろうか。




