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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
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シュワシュワとドロドロ


 「それで暖かいうちに持って行ってほしいのよ。それお酒の入れ物でしょ?」


 「あ、ああそうですね。わかりました。」


 サラサさんはそれだけ言い残すと鍋に火をかけ次の料理にとりかかっている。


 あんま、料理ができそうなイメージはなかったんだけど…この姉妹は本当家庭的だな。


 「ほら!いつまで摘んでるの。さっさと運んでよ。」


 枝豆と同じで食べだすと止まらないってやつか、無意識で食べ続けてしまった。


 「いや…サラサさん、いいお嫁さんになるなと。」


 「……。」


 元の世界とは形の違うフライ返しを片手に固まり、俺を凝視するサラサさん。


 あれ?俺なんか変なコト言ったか?


 「…ありがとう、でもそれはアヤセに言ってあげて?これ実は、アヤセの得意料理なのよ。」 


 「そうなんですか。」


 なんか褒め言葉をかわされた感じかな…それにしてもサラリと妹へフォローするなんて、この姉妹は本当に仲がいいな。


 俺は気をとり直し、タンクの注ぎ口に斜めにグラスをあて、コックをひねる。


 『ジュワシュワッ』といい音が響き琥珀色の液体がグラスへと落ちていく。


 最後に、じわじわとグラスの縁を上がってくる白い泡のトッピングは、本物のビールのようにはいかないけど、炭酸という意味ではかなりのシュワシュワ感が味わえる。


 この世界に炭酸があるのかは知らないが、少なくともこの国の庶民の利用する場所ではお目にかかったことがない。


 びっくりしてくれるだろうか?


 


 『カコンッカラカラカラ』


 私はあまり見慣れない引き戸の扉を開く、最近は物置なんかでしか引き戸というのは見たことがなかったので、家の中にこれがあるのはなんか不思議。


 ふわっと木の香りが香ると、同時に目の前が真っ白く煙る。


 徐々に湯気が薄く消えていくと、お風呂というものの全貌が明らかになる。


 自慢じゃないけど、うちの実家は、小さな国だがそれなりに名家だった。


 この国の王族とは比べようもないけど、それなりに…そうそれなりにね。


 でも、湯船というのは入ったことがない。


 一般的にお風呂は、手動式のシャワーが一般的で、高級な宿や貴族の家ではお湯が出るが、庶民は真水だし。


 こんなきれいな木式のお風呂は見たことがない。


 「なんだアヤセ~~はやくゆぶねいこー。」


 「あ、ごめんね。うん。はいろ~!あっドロドロだからまず流そうね!」  


 タオルを巻いたままボー然とお風呂を眺めていた私はコトちゃんに導かれるように木の板を鳴らした。


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