気にしたら負けのやつ
ディアンジェラさんが贈ってくれた真っ赤なロングソファーは、結局玄関からは入らず庭を経由して居間に運び込んだ。
おやっさん一人が運んだわけだけど…あのパワーは毎度すごいなと感心する。
どうもこのロングソファーは、ディアンジェラさんの注文でおやっさんが作成したらしい。
道理で骨組みが鉄なわけだ。
なにか元いた世界の折りたたみベッドのようで俺的にものすごく気に入った。
サラサさんはというと、家から連れてきたアヤセにコトとキツネーズの世話を任し、自分はキッチンに入って料理の用意にとりかかっていた。
「…まぁソファは買おうと思ってたんで嬉しいんですけど、引越し祝いてちょと意味違いません?普通逆ですよ。」
「そう?ま、いいじゃない?」
「気に入ってくれたのなら、わしも嬉しいぞ。壊したのはわしだしな。」
そういやソファが半壊した理由は、この二人なんだよなぁ。
大体、なんでこの女普通に俺の家にいるんだろう…。
幻術師というわけじゃないのか?でもおやっさんが、普通の魔法のが得意みたいなこと言ってたな。
「な~に?」
ふとディアンジェロさんと目が合った。
考え事をするとその人を見つめ続けてしまう…元の世界にいた頃からの悪い癖だ。
「あの…ディアンジェロさんて…」
聞いていいものかどうか悩んでしまうな。他のことでお茶を濁しておくか。最初から面倒臭い雰囲気になるのはゴメンだしな、何よりお隣さんになるわけだし。
「王都に居たんですよね?」
「そう…ね?」
「何故、疑問形…。」
「王都にはいたけど、私が居たのは特殊な場所なのよ~。だから王都のことを聞かれても私にはわからないわよ~。なにしろ外に出たのはコレがあれ以来初めてだし~。」
なんかさらっとおかしな事言ったな…この人。
気にするな、気にしたら負けのパターンのやつだ。
引き篭もり美人ってことにしておこう。うん。




