美女と野獣
「はいこれ、引越し祝い。」
「「……。」」
外の空気がだいぶ冷たくなり、夕暮れ時を知らす鐘の音がなる頃、俺とサラサさんは無駄に豪華な馬車に揺られながら家の前と到着した。
そこに待ち受けていたのは、俺の家の玄関前にまるでバス停かのように、ベンチではなく豪華な真っ赤なソファを置き鎮座する美女と野獣。
状況が把握出来ず俺とサラサさんが目をパチクリとしながら、馬車からも降りられず固まっていると、
「おお~、じいちゃん!きたか!」
ちょうど帰宅してきた、コトの声で我を取り戻す。
俺とサラサさんは急いで馬車から降りると、丁寧に従者の方にお礼を言い馬車を見送る。
「おやっさん何してんですか!?」
「おお~とうちゃんもいっしょだなぁ。」
コトとキツネーズが視界に入る。
おい…お前等もすげぇ事になってるな。
コトは髪の毛はぐしゃぐしゃ、鼻からは鼻血を流しながら、身体や服は泥だらけ。つかなんでそんなびしょびしょなの?
キツネーズの身体もなんだか極端に泥で汚れており、毛並みもなにか一部分が逆立ってたりとおかしなことになっている。
俺はコト達とおやっさん、ディアンジェラさんを交互に見ながら。
「とりあえず…中へ、コトは獣達と風呂だな。」
「おっふろ~~~!!」
「おっおいっ!泥だらけのまま入るな、泥落としてからだ。庭いけ庭。その間に風呂にお湯入れるからな。」
俺には休まる日はないのかと頭を抱えそうになった時
「手伝おうか?」
天の声が聞こえた!
「お願いしますっ!!」
俺はサラサさんの申し出を二つ返事で受ける。
よく考えてみろ、コトを風呂に入れて二人の客を接待し飯や酒を出すなど、アグエロ疲れの激しい今日の俺には無理だ。
「私が買い物に付きあわせたわけだしね。じゃぁ助っ人呼んでくるから先に戻っててね。」
助っ人……ああ、妹ね……南無。




