俺と美女の生地戦争 Ⅱ
「な、なぁティファ?やっぱりこういうのは良くないっぷ」
「黙って。」
投げつけた布がリオンの顔面に命中する。
路地の影の部分に潜むように隠れているリオンとティファ、見つめる先にはシロとサラサがなにか言い合いをしている。
「………(もめてる?いい感じ?)。」
しばらくするとサラサがシロを引きずって歩き出した。
「リオ。」
「あ…やっぱり?」
「これ、よろしく。」
ドスンとリオンに先程大量に買い込んだ生地の山を押し付けると、ティファは疾風のごとく消えていった。
「…ティファ、これ結構運ぶの毎回大変なんだよ。」
届かない嘆きの叫びは、ティファに聞こえるはずもなくリオンは生地に埋もれたまましばらく過ごすことになった。
――――――
「やっぱりダメか。」
サラサさんはがっくりと肩を落とす。
やはりというか、思いの外貴族街への進入はガードが固く、信書や貴族同伴ではないと難しいとの事だった。
もはや明日が彼の誕生日なのと言わんばかりの勢いで、生地探しに奔走したサラサさんの落胆の度合いはスゴイものがあるな。
「しょうがないですよ。今度アグエロさんにでも頼んでみましょうよ。」
「兄様がどうかしたの?」
「ええ兄様に御願い……!?アルフィ~!?」
耳の穴を指で抑えながら
「うるっさいっつーの…それに私の名前はアルフィ!フィ~ゆーな。」
振り向けば馬鹿みたいに豪華な馬車の客車から真っ赤な髪をサイドに二つに束ねたツインテールの美少女が俺達を見下ろしていた。
アルフィは、いつもとは違いウィッグも着けておらず、普段のラフな格好ではなくドレスのようなきらびやかなワンピースで見を包んでいる。
しばしその姿に俺はあっけにとられていると、右尻に鈍い痛みが走る。
「イッ!」
つねられた?サラサさんっ!?
うわっ…すげぇ睨んでる。
「……。何してんの?あんた達。まぁ、普段平民が見ることの出来ない美しい私の姿に見とれてしまうのそうがないことだけど。おほほほ。」
そう言うとアルフィはドレスを魅せつけるためか客車から降りてきた。
何それ…何キャラだよ。そのとってつけたセリフっ。
「いや…みとれてたっつーか、…呆然としてたというか。」
「はっ?」
「…いやさ、いつもガサツな感じのアルフィでも…その馬子にも衣装っつーか…。」
「プッあははは。」
サラサさんの吹き出した声とともに、目の前の美少女が髪の色と同じくらい真っ赤な顔をしてプルプル震えていた。
あ…まずった…かな。
「しっっっねぇぇっっっ!!!」
ガコッっと激しく揺れる顎と逆に揺れる脳。
「ト…トラースキック…。」
足刀が俺の顎を撃ちぬいた。
耳にはエコーのように響くサラサさんの笑い声が残侠している。
俺の今日はここまで…か。




