俺と美女の生地戦争
コトが森へ向かってる間、シロはなぞの隣人と遭遇したり、もう一人の隣人でもあるサラサから下着の進行状況などを催促されながらあまり平和とはいえない時間を過ごしていた。
なんで俺の周りはこうも騒がしいのだろうか。
俺はメインストリートを半分引きずられながら、ある店へと入店していく。
俺はなにしに此処へ来たのだろう…目の前で難しい顔の美女が布切れと格闘中だ。
「これは…やっぱり。…これ柄はいいけど。」
時々気むずかしい顔でおでこに指を当てる仕草で、サラサさんは必死に下着の生地選びをしている。
「お金なんて気にしないでいいから、生地選びに行きましょう!」
布ゴムの目処がおやっさんのつてで、何とかなりそうになったと聞いたサラサラさんは、鬼気迫る表情でそう迫ってきた。
結局は有無を言わせずここまで引っ張ってこられたわけだけど…財布役でもなく、俺は何故此処に連れて来られたのか。
「ダメね。やっぱり貴族街の方の店じゃないと。」
布ゴム制作の際に、お世話になる人もなんか変わった職人さんだったな。
おやっさんの知り合いは、皆クセがある人ばっかりだけど、ゴムを見せた瞬間何か恐ろしいくらいのオーラを背中から立ち上らせ、俺の話をウンウンいい、時には激しく頷きながら真剣な表情でミシンへと向かうと、あっという間に試作品の布ゴムを作ってしまった。
もちろん、ゴムの強さの加減、厚さ等はまだ甘いのですぐに実用化も難しいものではあったが、これ程までに再現できる光がすぐ見つかるとは思ってもいなかった。
元々王都で貴族なんかのドレスのデザインなどを手がけていたらしい、本人はデザインよりも職人としての作業に重きをおいており、様々な誘いを断り平民の服飾系のみを扱うようになった所貴族達に圧力をかけられたそうだ。
結局は自分の店をたたみ、貴族からの圧力ですべての仕事を奪われた形で王都を追い出され、いろんな街を転々としていたんだとか。
王都では都落ちだの、裏で陰口を言われているらしく、おやっさんがこの街の仕事を斡旋するまでは食うもんにも困るほどの生活だったらしいけど。
「……ねぇ!聞いてるの?」
俺が余計なことを考えているうちに、サラサさんの顔がいい感じに険しくなっていた。
「えあうっ、すいません…ちょっと考え事を。」
「こんな美女とデート中に考え事!?」
え~つか、これはデートじゃないだろ…。
「あ~そう!下着のことでちょっと…。はい。」
「下着?」
「布ゴムの改良案などないかなぁ~と…です…ね。」
「……ふ~、下着のことじゃしょうがないわね。」
しょうがないのかよ…この人の下着への情熱は本当に…。
「それで貴族街の布地屋に行きたいんだけど、ツテはない?」
「ツテ?あ~もしかしてやっぱ貴族街には許可無くってやつですかね?」
「そういうこと。」
あ~もしかして俺ってむやみに貴族やら王族やらに知り合いが多く写ってそうだからなぁ。
「すいません。そっち系に強そうな人の家とか知らなくて…。」
「えっ?ああ、いいわよ。そんなこと期待してないから。…とりあえず行くだけ行ってみましょう。」
「え?じゃぁなんで一緒にうああ。」
俺はまた美女に引きずられメインストリートを後にした。




