コトの行進
「ふふふ~ん、ふふふ~んふんふんふん。」
「あら、コトちゃんおはよう。」
「コトっ今日も早起きだな!」
道すがらすれ違う住民たちが声をかける中、いつものように三匹の狐をつれて上機嫌で歩いていく。
「コトちゃん、これもってって。」
「これも食ってけ。」
メインストリートを闊歩するだけで、毎日両手にいっぱいの食料や何やらを駆歩しつつ森へと向かっていく。
これがコトが毎日昼飯を食べにに帰宅しない秘密。
最早この街のマスコット的存在になりつつあるコトと三匹の狐達が毎日のように森へ向かう姿を衛兵達も心穏やかに見送る。
何しろ聖獣三匹の護衛付きだ。
自分達が心配する余地はないとばかりに送り出す、前回の事件で今まで緩かった聖獣や森に対する様々な縛りがキツくなった為か、最近は用もなく森に進入することは禁止されている。
それも現在は一部を除き森全体の土地を王族が買い取ったせいでもある。
その一部というのは、シロ名義でドヴァーリンが購入したゴムの木の群生地であるのだが、これもいずれ利権やらなんやらと面倒臭いことになりそうである。
聖獣に関しても一般市民にはまだ、あの狐が聖獣であることは公にはなっていない。
この街で知っているのは一部の兵と貴族達、そして王族。
だがこれも一応表向きはということで、実際には一般市民にもある程度は浸透おり周知の事実であったりする。
もちろん全員が全員コトの味方というわけではないが、その天真爛漫な愛嬌のよさは一度コトと話したことのあるものなら、誰もが虜になる魅力を兼ね備えていた。
まさに可愛い人誑し。そんな表現がいい意味で似合う存在となっていた。
「きょうはなにするかー?きのうのとこでおいかけっこかなー。」
何も語らぬ狐とのコミュニケーションは、なんとなくそれで成り立ってしまっているかのように思える。
今日も通常運行のコトがいる限り、この街も平和なのだ。
貴重な時間を私の拙い小説にさいて頂いて有り難うございます。
ブクマ、評価して頂けると今後の励みになります。
宜しくお願い致します。




