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ことしろ  作者: 無色瞳明
第一章
102/166

明日はきっといい日


 ドヴァーリンは、あらたまった表情でカップを指で弾き甲高い音を鳴らす。


 これは冒険者なら皆が知っている合図の一つ、誰が始めたかは知らない、だがいつの間にかこの世界に定着し老練な戦士からなりたての青いルーキーまでもが何の疑問も持たずに使う。


 【注目しろ】【お遊びはここまでだ】言うなれば、真面目な話をするからお前等集まって聞け。という合図だ。


 「…主役は、どこか別の世界へ飛んでいっちまったがの。ここにいる全員に言っておきたいことがある。お前等もわかってると思うが、このようなことは今後も続く可能性がある。」 

 

 先ほどの喧騒は消え、全員が真剣な表情で頷く。


 「敵は誰とは言えねぇが、間違いなく国家レベルだ。今日此処を急襲したのは、名前ぐらい知っとるだろう?ディアンジェラだ。


 お前等に何かを強制するつもりないがな、この街をこの家を守ってくれ。頼む。」


 伝説が頭を下げた。


 それはまるで国王が平民に頭を下げるのと同じくらいありえないことだ。


 「親父っ!頭を上げてくれ!!俺はこの街に仇なす者は許せねぇ。」


 「おうよ!兄者が気に入らんもんは弟の俺も気に食わん!」


 リオンは先程のうなだれた姿とは一変したスッキリとした表情で


 「頭を上げて下さい。僕には個人的に借りを返さなきゃいけない奴がいる。次は倒しますよ、かならず。」


 「リオンがいうならやるしかないよな。」


 「そうだな。どうせアグエロの旦那に同じようなことを言われそうだしな。」


 蒼炎のメンバーが頷き合う。


 ティファは頷き「次で終わらせる。」と決意を新たにする。


 「次も同じ奴らが現れるとは限らない。他国を含み同国内でもその内この街は注目されることになろう。


 だからこそお前等には国ではなくこの街について欲しい。まっお姫様のいるとこで言うセリフでもないがな。」


 名指しされたようなもののアルフィは、迷いなくこう答える。


 「構わないわ。兄なら笑いながら喜んで貴方の意見に同意するでしょう。ねぇ?」


 「はい。お嬢様に仰る通りかと。」


 アリエッタの同意にアルフィはどう?と胸を張ったように見えた。


 

 「あ、とうちゃん。おきた。」


 「んん?あ、ぁぁまたやっちゃったか…。」


 俺は元の世界ではそういうキャラじゃなかったんだがなぁ。


 「とうちゃん…きのう?きょう?あれ。」


 「うん、そうだな。」


 コイツにとっては最近怖いことが続いたからな。気を失ってたとはいえトラウマにならなきゃいいが。


 「すっげぇぇたのしかったな!」


 ……。


 「…はい?」


 「だからすげぇひとか、ひとか、ぼおわあってなって。きれいだったな!あれまたやるのか?」


 「いや、花火じゃねぇんだから。」 


 …あんなんまたあってたまるか。


 つか、この世界のガキはなんかこう精神構造が俺のいた世界のガキよりタフなのか?


 ……いや、コイツが特別なのか?


 「なぁなぁ、はなびってなんだ?」


 「花火?花火はバァーってなてドカーンてなるやつだ。」


 「うおお!すげぇな。きのうのよりすげぇ?」


 「あ?でかいのはある意味あれよりすげぇな。」


 「そうか。たのしみだな。」


 「ああ。…ん?」


 「すげぇたのしみだ。はなび。」


 …なんでやることになってる?


 はぁ…まためんどくさいもんにくいついたな。


 まぁいいや、寝よう。


 明日はきっといい日だ。 


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