眼鏡x眼鏡xメガネ
「なんでしょう?」
嫌な予感満載の裏返しとお取れるような満面の笑みで答えを返す。
「……。」
話の内容は端折るが、一言で言うと「ああ、又なんか面倒臭い…。」である。
「眼鏡?」
「はい?ええと眼鏡のことでございます。とても不思議な眼鏡をしてらしたと聞いたもので…。それから何度かお目にかかっておりますが、一度もその…眼鏡をかけた姿を見なかったもので。」
ああ、そうか。
「俺は目が悪いのは悪いけど、掛けなくても見えるくらいだからね。みたいの?」
「…はい。出来ましたら。」
そうか、やっぱりアリエッタさんも眼鏡を掛けているから気になるのか。
「ちょっとまってて。二階にあるんだ。」
取り急ぎ俺は、二階まで駆け上がり机に無造作においてあった眼鏡を手に取る。
「それがメガネというものですね。」
「ヒィッ」
暗闇からヌイっと浮かび上がるメガネメイドが迫ってくる。…尋常じゃなく怖いぞ。
「ちょっ、ちょっと近いってっ……はぁ、はいこれ。」
思わず鼻と鼻がぶつかる距離まで接近されるとものすごく意識してしまうのは男の性だろうか。
元よりアリエッタは魅力的な外見はしてるんだけど…。
「こっこれは!?こんな動きをっ?変形機能付なんてっ!!」
その間も、ものすごい食いつきようで俺の眼鏡をこねくり回してる。
あ…あ~、あんまりレンズを…指紋だらけになった眼鏡に諦めを感じつつ、せめて壊さないでくれと祈った。
「ハァハァハァ…シロ様。これください。」
「…ダメです。」
「なぜですか!!」
眼鏡を握りつぶさんばかりに握りしめた拳がこわっ…。
「メ、メガネ壊れるから!?」
「はっっ!?も、申し訳ありませんっ!?だ、大丈夫です。大丈夫?」
いや、お前が大丈夫かよ。
アリエッタさん…見た目は結構可憐な感じなのに、ものすごく残念なメイドさんだった。
この後俺は、無理やり眼鏡をかけさせられ、永遠にこのままでいたほうがいいとか、眼鏡を外したら呪いをかけるとか言われながら、多分一時間以上俺の眼鏡の素晴らしさとか眼鏡男子の破壊力などを切々と語られた。
「これとおんなじ物はムリだろうけど、似た感じのなら。」
「似た感じのならっっ!?」
うおっ、だから怖いんだよ…残念メイドめ。
「おやっさんが興味持ってくれれば、再現可能かも。」
ぐいっ
「行きましょう!」
「はっ!?おっおい、落ちるって階段おちおああああああ…。」
本日一番とも言える激しいダメージを階段からの落下という形で味わうことになる。
「あんた何してんの?」
逆さまの世界には、いつかみたかぼちゃの王国ぐああ。
「どこ見てんのよ!?」
顔面に勢い良く突き刺さるアルフィのかかとの衝撃で久しぶりに黒い扉を叩くことになった。
ブラックアウト。
俺はこの世界にこれだけをやるために召喚されたのか…。
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