代わり
黒い雲が空を覆い、巨大な卵が顔を出す・・・。
フクシムはコトリを置いて家へ戻ってきた。
「いやいや、今回は早かったな・・・。」
「早いって・・・何が?」
--- ドォーーーンッ!!!
昨日より大きな衝撃音は、卵の落下位置が極めて近いことを示している。
「こいつらを捕まえて食べようとすると、決まって新しいのが生まれてくるんだよ・・・。」
「ええっ!?じゃあ、僕達を狙ってるってこと!?」
「もちろん、その可能性が・・・その可能性しかないな!」
「やばいよ・・・父さんは逃げれないし、ターニだって帰って来てない・・・。」
「・・・・・・ターニ?」
フクシムの顔つきが変わった。
少し驚いた表情でこちらを見つめている。
「うん、僕たちの分の配給を取りに行ってくれてるんだ。」
フクシムは僕の返事を聞きながら、静かに手首をほぐし始めた。
「坊主・・・名前を聞いてなかったな。」
「・・・ソーマ。」
「じゃあ・・・あの親父さんは・・・・・・シータか?」
「知ってるの!?」
--- バッ
フクシムはボロボロのマントを放り投げた。
それは、僕が今まで見てきた誰よりも立派な体だった。
「お前はシータを見てるんだ。」
そう言い残してフクシムは、タマゴが降り注ぐ外へと飛び出していった。
僕はもう何がなんだか分からなくなった。
フクシムは父さんの名前を知っていた。
ターニの名前も知っていた。
フクシムって・・・一体誰なの・・・?