朝食
不気味なコトリはたくさん降ってくるけど、綺麗な鳴き声の野鳥や小動物なんかはここらじゃ全く姿を見なくなった。
だから、朝なんて今じゃ単なる「夜の終わり」だと思っている。
僕が起きるとフクシムの姿は無かった。
最初から高価な物なんて無いんだけど、部屋の中を物色した様子もなかった。
本当に、屋根の下で眠るだけが目的だったんだな・・・
僕はあっという間にまた、父さんと2人ぼっちになった。
ターニはまだ帰ってきている様子もない。大丈夫なのだろうか・・・
--- ~♪
遠くの方から鼻歌が微かに聞こえた。
ターニの弱々しい声とは対照的な、豪快で通った声。
「おーい!ボウズ!食料何もなかったから、朝飯持ってきてやったぞ!」
--- バンッ!!!
一方的に開かれた扉から、何か大きな風呂敷を抱えたフクシムが入ってきた。
「配給は取りに行ってないのか?」
「隣に住んでるおじさんが、今取りに行ってくれてる。」
「こんな時代でもメシ食わないと、コトリのエサにもならんぞ!!!」
「なりたくなんかないよ・・・。」
フクシムは風呂敷を床に卸すと、あたりをキョロキョロと見回した。
「台所なんてのはなさそうだな!」
「料理なんてすること無いからね・・・。」
「じゃあ仕方ない、生で食べるしかないな!」
--- パサッ
「・・・ギャアアアアアアアアアッ!!!」
僕はここ何年かで出したことのない大声を出してしまい、そのまま気絶しそうになった。
フクシムが開いた風呂敷の中から現れたのは、毛をむしられたコトリの死体だったのだ。
「おいおい!そんな声出したら親父さんが起きちまうだろ!?」
「だっ・・・だっ・・・」
「ん?ダチョウじゃないぞ?コトリだぞ?」
そんな事はわかっているし、そもそも父さんは起きるはずもない。
というか、コトリはいつ現れたんだ?そして、フクシムはこのコトリをどうやって手に入れたんだ?
「・・・・・・ああっ。」
次から次へ湧いてくる疑問と、目の前の悲惨な光景、更には死体から放たれる不愉快な死臭で・・・僕は白目をむいてしまった。
「おいおい!大丈夫か!?」
「そっ・・・それを・・・外に出して・・・!」
「情けない野郎だな!旨くはないが、栄養にはなるぞ!?」
フクシムはコトリをかついで家の外に出た。
胃の中が空っぽだったから吐くことはなかったけど、気分は最悪で僕はもう一度横になることにした。
--- ビーッ!!!ビーッ!!!
警報が鳴ったのはそれから5分もしないうちだった。