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coclea  作者: 国見炯
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買い物に行こう・2



 折角だから散歩させよう──と宣言し、購入してあったリードでルルとリルを散歩させる。異空間でも自由に動き回っているけど、ルルとリルはリードをつけての散歩も好きみたいで、元気良く動き回る。

 尻尾をふりふり。時にはピンと立て周りを警戒したり、ルルがリルを守ったり。

 若干、リルの尻尾が内側に巻いているのは、元々の性格が臆病だからだろう。そしてルルがリルに対して過保護に守るので、その所為もあるかもしれない。

 その辺りのハンターなんて瞬殺出来る実力を兼ね備えたほぼ最強な2匹なんだけど。


「姉さんはホント動物が好きだよね」


「うん。好き!」


 寧ろ愛しています。

 何の迷いもなく言い切れば、ライちゃんにくすり、と笑われた。

 ちょっと大人びた表情を浮かべるようになってきたなぁ。その辺りは、12歳の頃からハンターとして生計をたてる手伝いをしてくれたから、仕方ないのかもしれない。

 後は年の近い私が、年相応ではなく大人の感性で動くから、それを見習ってしまったのかもしれない。

 3歳で母が死に、家族に見捨てられ、ライちゃんをイルハとアレハと一緒に育ててきたから、子供の演技もしなかった。する必要もなかったし。

 寧ろ私が転生者じゃなければ、私とライちゃんは既にこの世を去っていただろう。だから仕方ない。そう思う事にしている。

 ただ、12歳でライちゃんがハンターになるとは思ってもみなかった。それだけは未だに気にかかる。


「ルルの気持ちがよくわかるなぁ」


「ん? 何か…」


「リル。拾っちゃ駄目だよ」


「り……リルちゃん!」


 ライちゃんが何かを言ったような気がしたんだけど、その後のリルちゃんの行動を注意する言葉になってしまった。拾い食いは多分大丈夫だとは思うけど、それでも良い気分はしないので注意する。

 リルちゃんを呼ぶと同時に腕を伸ばし、リルちゃんを抱え込む。道端に落ちていたのは、箱に入ったチキンの食べ残しだった。


「駄目でしょ。リルちゃん」


 やはり犬だけあって、お肉は大好きなリルちゃん。

 ルルちゃんとリルちゃんは召喚獣だから、普通の犬と違って玉葱や葡萄やチョコレートなんかも大丈夫なんだけどね。何でも食べれるし。そんな2匹は雑食だ。イルハとアレハがご飯を作ってくれているけど、毎食完食してペロリ、と舌で口の周りをふき取るような動作をする。

 雑食だけど、拾い食いだけはいただけない。

 しかも何処の誰が食べたか分からない食べ残し。


「姉さん。これでもあげよっか」


 ライちゃんが袋から取り出したのは、犬用のおやつの定番──だと私は思ってる──、ササミ巻きさつまいも。ガムもあるけど、それだと食べ終わるのに時間がかかるので、外だと食べやすいササミ巻きさつまいもや、キューブ型のおやつをあげている。


『わふ』


 満足そうにおやつを食べるルルちゃんとリルちゃん。

 その幸せそうな表情に癒されながら、私はもう一度リルちゃんを抱き上げた。柄の悪い男たちが後を付けてきてる。


「ライちゃん」


「ん」


 私たちが纏う空気の変化を感じ取ったルルちゃんとリルちゃんは、瞳の色を黒から赤へと変化させる。

 戦闘態勢を取っているんだけど、どうしようかな。

 実際、この子たちは可愛い見た目に反してレベルは凶悪的だ。cocleaのプレイヤーのレベルは500だ。クエスト全クリア。特殊NPC達全員と友人になるという条件を全て満たすと、上限が700まで上がる。

 条件の中に特殊NPC全員と友人になるのが一番辛いらしい。その難しい条件がクリアー出来ず、大体400から500辺りがプレイヤーの最高位と思っても問題ないだろう。

 対して召喚獣は、種類とプレイヤーの努力で変わってしまうが、基本的に最高レベルはプレイヤーと同じだ。ルルちゃんとリルちゃんについては、レベル495という凶悪的な数値である。

 私が買ったカードの元々の持ち主が上げたのか。それともおまけという名の転生特典でそこまでレベルが上がったのかは分からないが。

 カードを確認した時に、召喚獣のレベルはプレイヤーに負けず劣らずという事実に吃驚はした。勿論、誰にも話せてはいない。

 他には、友人になれる特殊NPCのレベルは300がMAX。他の一般的なNPCは200まで。

 なので、ルルちゃんとリルちゃんの495というレベルは、心底凶悪という事になる。私よりも高レベルな2匹。ハンターになってから5年経つけど、まだ150までしか上がっていない。レベルが上がるペースはこれでもかなり早いらしいが、召喚獣全てが私よりも高レベルなので、私自身が上がった気はしない。

 頑張り始めている2匹にどうしようかと思うけど、ここで騒ぎを起こすのは得策じゃない。

 街外れまで行けばついて来るかな、とライちゃんに視線を送れば、頷いてくれる。

 ちょっと面倒だけど、ハンターをやっている限りこういう事は珍しい事じゃない。

 それなりのハンターを襲って、アイテムを奪う事が出来たら、それだけで簡単に一財産が稼げてしまう。

 高位の冒険者になると逆にのされた上に、憲兵に突き出されるので、狙うのはあくまで中位ハンターに限られる。

 今の私のレベルは150だけど、ギルドランクで言えばまだB。ライちゃんにいたってはCだ。これは実力というより、年齢制限がかかっている。私が18歳になればA以上にもなれるが、今はまだ17歳。

 それを知らない人たちが、勝手に私達を狙い目だと決めつけて襲ってくるのだ。

 確かに封玉やアイテムはそれなりに揃えているから、裏街で売ったら本当に財産になる。

 財産にはなるけど、それを売るつもりも、他人の懐を温めるつもりは全くない。

 5年かけて揃えたアイテムを奪われてたまるか。

 内心は苛立ちを抑えられてはいないんだけど、表面上は散歩を楽しむかのように歩いた。勿論、街外れまでのさほど長くない距離だったけど。






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