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coclea  作者: 国見炯
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プロローグ・2

 この世界は五つの国によって治められている。

 真ん中にある中央都市を囲むように東西南北の四つの国。

 当然、国によって栄え方は違う。

 今、私がいる国は南方都市。北方都市や中央都市とは違い、まだ魔術師や召喚師といった人間が数多くいる。

 千年ほど前から中央都市では科学の力が研究され、千年後の今は魔術よりも科学が主流になっている。

 国の歴史から見ると、500年程前が、私が少しだけ知っているゲームの世界だろう。一番召喚師が多かった時代。

 勿論プレイヤーたちの事を示している。

 プレイヤーの激減と共に召喚師はいっきに数を減らしたらしい。

 ただ、中央都市も元々は魔術が主流だった頃の名残なのか、今でも魔力を持つ者は多い。多いが、南方都市とは違い内にある魔力を表に出せず、魔術を使えずに終わる人間も珍しくはない。


 それをどう思ったのか、中央都市では科学と魔術を融合させ、魔術の媒体となる玉と呼ばれる魔法石を編み出した。自身では魔力を表に出せなくても、その玉を媒体にすれば魔術を使える。

 元々魔術を使える者にとってみれば、魔力を注ぎ込むだけで発動する玉は時間短縮に利用するだけのモノだが、便利だと所持している魔術師の数は多い。

 玉よりも高級品になるモノを魔石と呼ぶが、あまりにも高級な為、市場に出回る事は滅多にない。玉よりも強力な魔術の媒体になるが、資産家さえも一気に家が傾く値段の為、主流になっているのは勿論玉の方だ。


 私も幾つか持っているけど、確かに玉の存在は楽で重宝している。それに魔力を込めるだけで魔術を使えるのだ。幾つかのアクセサリーに埋め込み、初級の魔術はほぼ全て玉に頼っている状態になってしまっている。

 それに魔力を注ぐだけで発動する。

 玉の強さによって込められる呪文は違うが、そんな事は気にならない。魔術師としての才能もあるが、召喚師としてのチート品のカード。つまり召喚獣を何千と抱えている私にとって玉はただの便利グッズに過ぎない、

 色物から回復まで揃っていないカードはほぼ無し状態だろう。最終的にcocleaをやらなかった私にはわからないが、これだけ揃っていると無いんじゃないかと思えてくる。

 そして、今となってはただ一人の身内の弟は、数百年ぶりに現れた魔術の天才だったりする。その弟に呪文をカードに入れてもらったりしているから、強い魔術が不足する事はない。

 私は裏技チートだけど、弟は純粋な才能。

 私たちは冒険者に登録し、その名をじわじわと広げている。

 勿論、本当の名は名乗ってはいない。本来の苗字にあたるものは、貴族特有の長ったらしいもの。あの名前は捨てたのだ。

 今はイシュリカ・ヴァーナル。それで十分。それに10年間会っていない家族の名前や顔なんて忘れてしまった。

 ある意味薄情なのかもしれないが、育児放棄をした家族なんていらないというのが本音だ。あの時、ライちゃんは生まれたばかりだった。




「姉さん。こっちは終わったよ」


「そっか。こっちも終わった……かな」


 キョロキョロと辺りを見回すが、生きている魔物の気配は無い。今回の依頼は獣退治。最近村の近くに出没し出した狼型の魔獣と畑を根こそぎ駄目にするトカゲ退治だ。

 トカゲはライちゃんが退治してくれた。

 狼型の魔獣は全てカードの中に収めている。知能があるし、便利で可愛いのだ。

 レベルが上がってくると同時に左手の刻印の中にある異次元もパワーアップし、今では地球何個分までになっている。

 この世界の召喚師は本来、カードを収めておくだけらしい。カードに収められた召喚獣はそのカードを媒体にし、転移魔方陣で召喚されるだけ。

 刻印に収められている異空間もそれほど大きいものじゃない。ただしプレイヤーは違う。プレイヤーの刻印に通じる異空間は、それこそ地球何個分や宇宙何個分等の空間に繋がっている。

 そこに契約した存在がいる。イルハとアレハに聞いて分かったんだけど、私が持っているカードの中の契約者は、私の左手の刻印の中でのびのびと暮らしているらしい。思わず左手の刻印をまじまじと見ながら首を傾げてしまう。

 ひょっとして、とりあえずカードを刻印の中から取り出して契約相手を召喚するという手順に則ってはいるけど、その気になったらカード無しで召喚出来るのかもしれない。

 なんといっても左手の中で生活しているのだ。

 まぁ、刻印の中の棲家と外の世界の棲家を行ったり来たりしている子たちも多いらしいので、やろうとは思わない。

 何より目立つ。あくまで、自分たちにとって平和に過ごすのが目的なのだ。



「どうしたの?」


 ボーと考え込む時間が長かったのか、ライちゃんが不安げに私の顔を覗き込む。


「ん。大丈夫だよ。トカゲはどんなのだった?」


「2mぐらいのヤツが30匹ぐらいいたかな。

 相手を指定して凍らせてから砕いて消滅させたから、畑に被害はないよ」


「そっか。怪我もないみたいだね」


 ライちゃんを上から下まで確認するが、怪我はない。今朝、宿屋を出発した状態を保っている。なんら変わりない。


「姉さんも怪我ないね、良かった」


 安心したように笑うライちゃん。

 私のほうは大丈夫だよ、今回の狼さんのしつけも頼み済みだし。

 きゃうんと声が聞こえたような気がするけど、気にしたらしつけは頼めないので聞こえないフリを決め込む。


 ……フェンリルに任せたのは、ちょっと可哀想だったかもしれないけど。


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